2013年3月13日水曜日

Mark-Ⅰ型格納容器

『Mark-I型』は、沸騰水型(BWR)原子力発電所の、格納容器の型式の1つである。「MK-1」と略記される。炉心溶融事故を起こした福島第一原子力発電所は、1~5号機が『Mark-I型』の格納容器である。東日本大震災(2011年3月11日)で炉心溶融事故を起こしたのは、運転中であった1~3号機であった。
4号機の原子炉建屋も水素爆発で大破したが、これは3号機のタービン建屋から水素が回り込んだもので、4号機の炉心溶融事故はなかった。

右図が建設中の『Mark-I型』格納容器である。
フラスコ型の格納容器の下に、ドーナツ型のサプレッション・チェンバー(圧力抑制室)があり、これを蛸足配管で接続した構造である。これ全体が『Mark-I型』格納容器である。
ドーナツ型の「圧力抑制室」の底部には、常時水が貯められている。

「格納容器」の使命は、原子炉の1次冷却水が、万一配管破断事故等で外部に漏水した場合でも、放射能を含む1次系冷却水を「格納容器」内に閉じ込めて、外部の周辺環境に放射性物質を放出しないことである。
1次冷却水は、運転中は高温高圧であり、万一「格納容器」内に漏出した場合は、高温高圧の水蒸気の噴出となる。漏出蒸気は、ドーナツ型の「圧力抑制室」内の水中に噴出して冷却され水となり、格納容器内圧の上昇が抑制される。
中・小規模の『1次冷却水漏出事故』に対しては、極めて有効な合理的構造の格納容器であったと考えられる。

しかしながら『MK-I』の根本的な問題点は、1次冷却系の「大破断等に起因する炉心溶融事故」等の場合の格納容器の機能不全の問題である。
1次冷却水の略全量が「水蒸気」として格納容器内に放出され、更に炉心溶融で燃料被覆管のジルカロイ-水反応による水素発生等で「格納容器」内圧は急上昇し、格納容器内圧は耐圧限度を越えてしまう。この場合当然ながら、格納容器の安全弁は解放され、『放射能を含む1次冷却水の水蒸気や水素』を格納容器外に放出してしまう。
格納容器としての機能が放棄されてしまうのである。

昔の『原子力神話』では、原子炉からの放射性物質の漏出は「3つの金属障壁で守られ絶対に安全である」と言われていた。①ジルカロイの燃料被覆管1次冷却水圧力境界鋼材③格納容器鋼板、がその「3つの金属障壁」である。
2011年3月11日の東日本大震災の地震と津波により、この『原子力神話』は泡沫(うたかた)のごとく崩れ去ってしまった。

炉心溶融により、燃料被覆管は水と反応して大量の水素を発生しながらぼろぼろに破損し、水素は「1次系圧力境界」と「格納容器」を通り抜けて、「原子炉建屋」上部に至り『水素爆発』を起こした。
そして多量の放射能を発電所の周辺環境に放出してしまった。
また、海水中に高レベルの汚染水が流出したことから推定して、格納容器下部での格納容器損傷も当然疑われている。

『MK-I』型格納容器の根本的な問題点を端的に表現すると下記である。

  1. 構造が複雑で、大地震等で損傷を起こす。
  2. 内容積が小さく、1次系破断事故の内圧上昇で簡単に安全弁を開放し環境汚染を招く。
『MK-I』型格納容器を持つ国内の原子力発電所は、下記である。
  1. 福島第一原子力発電所1~5号機(1~4号機:廃炉)
  2. 浜岡原子力発電所1~2号機(2009年1月30日運転終了)
  3. 島根原子力発電所(2010年度以降運転されていない)
『MK-I』型格納容器の原子力発電所は、外国では今も気楽に運転されているようである。
日本は地域独占の大電力会社方式である。米国は日本と異なり、原則的に「発電」・「送配電」が分離されており、小さな発電会社が沢山あり競争している。
米国内の『MK-I』型格納容器の原子力発電所で、今も運転されている原子力発電所は20基をはるかに超えている。これは国情の違いとはいえ、随分と恐ろしい話である。

この輸入炉の設置について、日本国政府は原子力安全委員会に諮問し安全審査を行い、通産省(当時:現在は経済産業省)は安全と認めて設置を認可している。東京電力と共に、日本国政府も福島第一原子力発電所の事故責任の一端は担うべきであろう。
安全審査の委員となった先生方は、『なぜ安全と判断したか』法か基準の見直し・機構や制度上の問題点等について、反省や改善提案が為されるべきであろう。
以上

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