2010年6月27日日曜日

地球温暖化

 地球温暖化を論ずる場合、最初に自分の立場を説明するのが良策と思う。

 現在の平均気温ベクトル(趨勢)が温暖化か寒冷化かの議論には関心が無い。また地球平均気温の「計算シミュレーション」にも、数百年未満の短期モデルにも全く興味が無い。加速度的増大を続ける人類による野放図なCO2発生は、今後抑制に向かわねばならない。エコ技術・自然エネルギー利用・原子力発電の推進等で、抑制は可能である。
 しかしながら、「大気中のCO2濃度の制御で、地球の気候を安定に固定できる」とする様な主張をされると、聴くに耐えない思いがする。自然を恐れぬ「傲慢不遜な考え方」だと思う。

 この様な立場で、地球温暖化を科学的に検討してみたい。


 世界最大の島グリーンランドは、デンマーク領である。実態は南部の沿岸を除けば、殆どは厚さ3~4千メートルの氷床に覆われている。この氷床を上から底までボーリングし、得られた氷柱を分析すれば、過去の地球の気温変動を知ることが出来る。このため、コペンハーゲン大学・日本・ヨーロッパ各国の共同で、氷床掘削プロジェクト(NGRIP)を結成し、島中央部で氷柱を採取し、詳細な分析がなされた。

ウィリー・ダンスガード博士(コペンハーゲン大学)やハンス・オシュガー博士(ベルン大学)等より「25万年前~現在の気温変動の推定」が発表され、「ダンスガード・オシュガー イベント」として有名である。





 横軸が時間。1目盛2万年、左から右に時間が経過し、右端が現在である。縦軸が気温変動。1目盛10℃、現在の気温を基準温度としている。

 これは氷中に含まれる微細気泡中の空気のO16とO18の同位体重量比の変動から導き出したものである(温度が高いほどO18が多い)。

これをみて私は驚愕した。

  1. 激烈な気温変動が極めて頻繁に起こっている。
  2. 5~8℃の気温急変は、過去に掃いて捨てる程沢山散在している。
  3. ここ1万年位は、極めて温暖で変動が少ない。過去に例がない。
  4. -1300年~ -1000年の間の気温上昇は特別激烈で、3℃/1000年 程度である。

 これらは謎であり、説明が付かない。しかし人類によるCO2発生に無関係な事だけは確かである。

 細かい変動は無視して、ゆったりした視点で眺めると、3~4万年周期(氷河期サイクル)の変動が読み取れて、若干安心した。

 地球上では氷河期と間氷期を繰り返す氷河期サイクルがある。どなたがどの様なモデルで温暖化の「計算シミュレーション」をするにせよ、過去の氷河期サイクルを計算で再現できなければ、計算モデルの正当性が疑われる。

 ここで温暖化議論の主役となるCO2の挙動を説明しておく。大気中のCO2と海水中のCO2は化学平衡関係にあり、大気中のCO2量の約2桁ほど大きい量のCO2が海水中に溶け込んでいる。海水中のCO2の1部は、海水中のCa,Mgイオンと結合し炭酸塩となって海底に沈殿除去される。Ca,Mgイオンは、岩石の風化作用により河川水に溶け込み、海水中に供給され続けている。この分だけCO2は確実に除去されているのだが、人類による大気中へのCO2放出量が多すぎて、大気中CO2濃度は漸増を続けている。産業革命以前で280ppm(容積率)程度、「石炭・石油の燃焼・森林伐採」等で20世紀末で360ppmである。80ppmの上昇である。地球の平均気温の上昇により、海水中から大気中にCO2が放出され大気中のCO2濃度が若干上昇するが、大略10ppm/℃程度の効果と見込まれる。産業革命以降平均気温が若干上昇しているとしても、80ppm増は全て人類の責任である。

 CO2は温室効果ガスである。ここで温暖化スパイラルの論理を組み立ててみる。

  1. 大気中のCO2濃度の漸増等で地球の平均気温が上昇する。
  2. 地表積雪面積(期間)が減少し、太陽輻射の吸収量が増大する。
  3. 太陽熱吸収量が増大するので、平均気温は更に上昇する。

 この様にして、温暖化シンドロームに突入する。

 寒冷化スパイラル論理は、下記である。

  1. 地球平均気温が下降し始めたとする。
  2. 地表積雪面積(期間)が拡大し、太陽輻射の吸収量が減少する。
  3. 太陽熱吸収量が減少するので、平均気温は更に下降する。

 これも簡単に、寒冷化シンドロームに突入する。

 問題は、シンドローム回避のために我々は”反転イベント”を創作する必要がある事だ。

 CO2論議だけでは問題解決の糸口は見つからない。金星の大気はCO2であるが、吾等の地球は「水の惑星」である。CO2濃度に比べ大気中の水蒸気濃度は桁違いに大きい。雲や霧が地表を覆い太陽光を反射し、熱吸収を減らすが、出現の時間・場所の変動が大きく全容把握が大変である。さらに水蒸気は、CO2以上に高性能な温室効果ガスである。従って温室効果の主役は水蒸気であり、それにCO2温室効果が若干加算されると考えるのが妥当である。

 これで主役・脇役が出揃った様である。ところがシナリオライターは、主役・脇役抜きで1920~1930年頃に”反転イベント”のシナリオを書上げていた。セルビアの地球学者ミルテン・ミランコビッチ(Milutin Milankovitch)である。地球公転軌道・自転軸傾きの振動・自転軸歳差運動 等から日照量の周期変化を求め、約2万・4万・10万年の3つの周期(ミランコビッチ・サイクル)があることを示していた。

 「ミランコビッチ」シナリオでは、主役・脇役は全く登場していない。しかし現在では脇役CO2の人気が非常に高いようである。「ミランコビッチ」シナリオに主役・脇役を登場させ、いかに上手く温室効果の役どころを演じさせるか、名演出家の出現を期待したい。

 今後の「氷河期サイクル」の科学的な公演を、寿命のある間に観てみたいと期待している。

以上