2013年2月11日月曜日

原子力規制委員会

原子力規制委員会』は、環境省の所管で事務局は「原子力規制庁」におかれている。英訳名はNuclear Regulation Authority(略称「NRA」)である。2012年9月19日発足した。右図は『原子力規制委員会』のロゴである。ホームページは http://www.nsr.go.jp/ である。

委員会は、委員長と委員4名(合計5名)で構成される。委員長と委員は、衆参両議院の同意を得て総理大臣が任命する。任期は5年で、再任も可能である。原子力産業(発電も含む)に関係するものは、委員・委員長にはなれない。

『原子力規制委員会』の任務は、「原子力利用における安全の確保」である。
このため地方機関として「原子力規制事務所」(国内20か所余り)があり、原子力発電所サイトに「原子力保安検査員」(定員152名)と原子力防災専門官(定員30名)が駐在する。
経産省所管であった、「旧・原子力安全保安院」を、『原子力規制委員会』が実行機関として引き継いだものである。人員800名程度、年間予算約376億円(2008年度)であった。

米国にも「原子力規制委員会」がある。Nuclear Regulatory Commission (略称「NRC」)である。任務は、、「原子力利用における安全の確保」と『原子力施設の許認可』である。総人員は約4,000人で非常に多い。年間予算は、2000年度4.7億ドルから2010年度10.7億ドルとほぼ直線的に増大している。「1ドル90円」で換算すると、2010年予算は963億円である。
ただし米国政府の支出は963億円の14%程度135億円で、828億円は「原子力設備設置者」からの『手数料』である。

日本は北海道から九州まで、『9つの巨大な電力会社が地域別に君臨』しており、発電も送電も一手に収めている。
今までは、原子力発電所の許認可権限を、経産省の官僚が握っていた。
以前は電力会社から「原子力発電所の建設許可申請」が出されると、経産省は内閣府の審議会の一つである『原子力安全委員会』に諮問して当該原子力発電所の『安全審査』を実施していた。我が国では、安全委員会は学者先生の名誉職であり、実質的な権限は殆ど無かったようである。日本の『原子力安全委員会』は、米国のNRCのような『実行メンバーを擁する組織体』を持たなかった。

現在は、内閣府の『原子力安全委員会』は存在しない。従って原子力発電所の許認可権限は、実質的に環境省の『原子力規制委員会』が持っていると考えられる。現在の日本の原子力規制委員会』(NRA)は、米国の原子力規制委員会』(NRC)と殆ど同じ権限と機能を持っているようである。

日・米の原子力発電では、国情の相違がきわめて大きい。
日本では前述のように、『9つの巨大な電力会社が地域別に君臨』しており、発電も送電も一手に収めて、競争のない『総原価方式』の独占価格の高い電気料金を享受している。
米国では『発電・送配電分離』が原則であり、『小さな発電会社が沢山あり』、競争の原則が十分に機能している。
このため、発電会社に対する『NRCのきめ細かな監督指導が必須』であり、NRCは多大の要員を抱え、確りした管理機構が必要である。

日本のNRA米国のNRCの対比を行ってみる。

                                         日本のNRA                 米国のNRC
人員            800人(2008年度)              4,000人(2010年度)
予算            380億円                    963億円(11億ドル)
政府支出予算      380億円                    135億円
予算/人員        4,750万円/人                2,410万円/人
     
政府支出予算/人員 4,750万円/人                    388万円/人
管轄下の原子炉    60基程度                    140基程度
摘要            発電炉以外も担当               発電炉以外も担当

①日本の原子炉数は、米国の半分以下。(0.429倍)
②日本の規制要員は、米国の1/5。(日本のNRAは十分機能を果たしているか。)
日本の一人当たり予算は、米国の倍近い。(1.97倍)
④米国では、政府支出節約で、規制相手から手数料を取る仕組みになっている。政府支出は、       NRC予算の14%程度。
⑤このため、米国では『NRCと規制先との癒着』等の疑惑が問題とされているようである。
以上