2012年9月1日土曜日

北朝鮮外交

赤十字を通じて、北朝鮮における日本人の遺骨収集の協議が行われる由であり、誠に喜ばしく思っています。これを契機に、日本・北朝鮮関係の改善が急速に進展することを切望する。

現在の日本・北朝鮮関係は極めて険悪な状況のままに置かれていると言っていい。
その主因となっているのは、北朝鮮の核兵器保有とミサイル開発である。これは日本側の言い分である。
北朝鮮側の立場で言えば、『「核ミサイル」は、北朝鮮存続のための不可欠の兵器である。』と言うことになる。

『異論な話:日韓講和条約と竹島問題』で記載したように、『朝鮮にある唯一の合法的な政府は「大韓民国政府」である。』と日本国政府が認めている。従って「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」は、「他の非合法的な政府」と言う地位に相成ってしまう。
この様になってしまった根本原因は、国連議決第195号(Ⅲ)である。

1948年、国連は朝鮮半島全体に自由選挙を実施しようとした。これに対し北朝鮮を事実上支配していたソ連は「自由選挙」を拒否した。南朝鮮は「自由選挙」を実施し、1948年7月20日『李承晩:イ・スンマン』氏が大韓民国初代大統領に選出された。国連議決第195号(Ⅲ)は、、『朝鮮にある唯一の合法的な政府は「大韓民国政府」である。』としている。

ただし、日本国も「大韓民国」・「朝鮮民主主義人民共和国」も当時の国連には未加入であった。日本国が国連加盟を認められたのは、1956年12月18日であり、「大韓民国」・「朝鮮民主主義人民共和国」の加盟は、日本加盟から遅れること35年、1991年9月17日である。

日・独・伊をはじめ、第2次世界大戦の枢軸国側であった全ての国が国連加盟を果たしているのであるから、国連憲章の『敵国条項』は削除されるべきであろう。
国連分担金の分担率(2012年)を下記に示す。

①米国      22.000 %
②日本      12.530
③ドイツ       8.018
④英国       6.604
⑤フランス     6.123
⑥イタリア     4.999
⑦カナダ      3.207
⑧中国       3.189
⑨スペイン     3.177
⑩メキシコ     2.356
安保理常任理事国の一つであるロシアは、⑮位1.602である。
安保理常任理事国全体の分担金分担率は40%弱でしかない。常任理事国は絶大な権限と『拒否権』を持っている分担金分担率は合計で50%以上とするのが当然であろう。
以上

国連の話で、若干回り道したようである。非合法的な政府とどう付き合うかと言う本題に戻る。
北朝鮮が核兵器を持ち、ミサイル実験を行った事に対し、日本国は報復措置として、北朝鮮に対する経済制裁を行っている。経済制裁は、場合によっては戦争にまで至る『危険な国家リスク』を孕んでいる。太平洋戦争は、アメリカの対日経済政策が引き金となってしまった。経済制裁を行う場合、相手国との戦争もあり得るものと心得るべきだ。
日本国内は、ほぼ全てノドンミサイルの射程内であり、主要都市はミサイルの標的となっていることは間違いない。

北朝鮮との外交交渉は、小泉純一郎首相の『平壌宣言:ピョンヤンセンゲン』から始まったと考えていい。小泉純一郎首相は、機を見るに敏でフットワークも軽快であった。同首相の最大の功績の1つが『平壌宣言』である。

『平壌宣言』は、2002年9月17日日本国小泉純一郎総理大臣と朝鮮民主主義人民共和国金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が平壌(ピョンヤン)で会談し、宣言したものである。
宣言内容の要点だけを下記に箇条書きする。

①2002年10月中に国交正常化交渉を再開する。諸問題に誠意をもって当たる
②日本国は植民地支配の歴史事実を認め、反省と陳謝を表明した。
  交渉において、経済協力の内容等誠実に協議する。
  1945/8/15(大日本帝国の敗戦日)以前の財産と請求権は相互に放棄する。
③国際法を守り、安全を脅かす行為をしないことを確認した。
 『拉致問題』については、日朝が不正常関係にあるとき生じた遺憾な問題である。
 今後再発しないことを確認した。
④双方は、北東アジアの関係諸国間で、相互信頼の協力関係の枠組みの整備が重要であると認     識した。
  朝鮮民主主義人民共和国は、ミサイル発射モラトリアムを2003年以降も継続してゆく。
以上

北朝鮮に『拉致問題』を認めさせたのは、小泉外交の大成果である。この後順次、地村家族・蓮池家族・曽我家族が帰国した。横田めぐみさんの娘だけは北朝鮮に残されている。
2004年には日・朝実務者協議が数度行われ、その他の拉致被害者の消息に関する議論が行われた。北朝鮮側が『備忘録』を発表し、日本側が『備忘録に対する反論』を発表した。実務者協議は喧嘩別れになっている。北朝鮮側は『備忘録』で継続審議扱いにしたかったのであろう。
日本政府側が、拉致被害者家族の感情に引きずられて、外交の本筋を見失った様である。
国交正常化に誠意をもって当たると双方が誓ったのである。実務者協議がどうであれ、国交正常化交渉を優先して、粘り強く折衝すべきであった。
北朝鮮側の言い分の大筋は、私にはよく理解でき正当だと思う。『平壌宣言』に基づき、生存拉致被害者は全員帰国させた。『これ以上無い袖は振れぬ。国交正常化の話を進めて欲しい。』と言っているのである。

こんな状態のまま北朝鮮外交は放置され、北朝鮮は核兵器を保有し、「人工衛星打ち上げと称するミサイル発射実験」を行った。

日本外交の基本的な間違いは、米国の核の傘で守られているという思い込み』である。日本が核攻撃を受ければ、米国が相手国に核ミサイルを打ち込んでくれると思うのは、笑い話にもならない勝手な思い込みである。米国が核ミサイルを発射するのは、米国本土が直接核ミサイル攻撃を受けた時だけである。

日本国は、広島・長崎に原爆を投下され、無辜の市民30万人が虐殺された世界唯一の被爆国である。毅然とした態度で、骨太の『核兵器廃絶の外交方針を全世界に示すべきである。インド・パキスタンを含めて、核兵器保有国には一円の経済援助も行わないことを宣言しなければならない。

北朝鮮の核兵器廃棄が確認されるまで、日本国は北朝鮮に対し一円の経済援助も行わない決心が大切である。
これだけの心の準備が整えば、北朝鮮との外交交渉は『万全の備え』となる。

いささか過激な話を続けたようである。毅然とした態度は必要であるが、当面は北朝鮮が普通の国になってくれれば事足りると思う。核兵器やミサイルを持っていても致し方がない。
日本国は、核兵器やミサイルを持っている多くの国と、普通に付き合っているではないか。国交を持ち貿易が盛んになれば、お互いに必要な国になるのである。
先ずは経済制裁をやめ、国交正常化交渉の糸口を見出すことが先決である。
以上