2011年10月5日水曜日

彼岸花

9月中旬から10月中旬までが、彼岸花の見頃である。散歩道のいたるところで見かける事ができる。彼岸花は実に妖艶な奇怪な花である。20から40cm程の細い花茎の先端から、細い赤い花弁が放射状に広がった大きな花が、可憐に咲く。花茎には葉っぱもなく、枝分れもない。匂いすらなく、唯ひたすら花だけが咲いている。全くユニークな花である。
花が消えうせると、韮(にら)の様な葉っぱが出てきて、冬の間は緑の葉っぱのままである。春には葉が枯れて、地上には彼岸花の痕跡はなくなる。草木の繁茂する春夏は寝て暮らすという、奇妙な習性を持った植物である。
彼岸花の別名は『曼珠沙華:まんじゅしゃげ』である。「まんず咲け」と理解するのが良いと思う。「先ず花が咲き」花がなくなれば「韮の様な葉が出てきて、春には枯れる」のである。これで彼岸花の1年は終わるのである。
彼岸花の染色体は、3倍体である。従って彼岸花は、毎年妖艶な姿を見せてくれるが、稔らないのである。彼岸花は、球根の分球でしか増殖する術がない。
実のならない花を毎年咲かせるのには、訳がある。彼らの人間に対する狡猾な深慮遠謀を考えるべきである。
我ら日本人は、2千年このかた彼岸花の妖艶・可憐な色に惑わされ、身近に移植し続けてきた。原産地は中国大陸と思われるが、日本中に広まってしまった。彼らの深慮遠謀に、日本人はまんまと乗ってしまったからに他ならない。
ヒガンバナ科ヒガンバナ属 学名 Lycoris radiate は、なかなかやってくれるではないか。球根は、アルカロイドを多く含み、有毒である。食用にはならない。