2012年12月5日水曜日

対韓外交

対韓外交の懸案の課題は、『竹島問題』であろう。2012年8月李明博(イ・ミョンバク)大韓民国10代(10人目)大統領が『竹島』上陸を行った。同氏の任期満了は2013年2月であった(2012年12月19日改選予定)。落ち目の政治家ほど領土問題で国民感情を煽るものである。

尖閣諸島では、石原慎太郎東京都知事(当時)が2012年8月頃、尖閣諸島購入の意思表示をしていた。彼の都知事の任期は2015年4月で、不可解な言動であると思っていた。何故東京都が尖閣諸島の土地名義が必要なのか理解に苦しむ話である。
その後の彼や彼の子息の言動を見て、、全てが理解できた。
彼らの今後の政治活動のために、領土問題で大いに国民感情を煽っておきたかったのである。

子息『石原伸晃』氏は、次期自民党総裁(阿部晋三氏当選)に立候補するし、『石原慎太郎』氏自身は都知事を辞任し、第3極の1角として橋下徹大阪市長の『維新の会』と合流し、12月16日(日)の衆議院議員選挙に立候補予定である。

20世紀においては、国民感情を煽り『愛国無罪』を標榜して幾多の戦争が行われ、約1億人の人たちが、戦争で生命を絶たれた。
21世紀は『愛国重罪』とし、領土問題でいたずらに愛国心を煽る行為を戒め、各国家の平和共存を掲げるべき世紀である。

韓国は、地理的にも歴史的にも一番身近な国である。これから極東の兄弟国として、何時までも仲良くしなければならない大切な隣人である。
日本語と韓国語は、基礎語彙は大きく相違するが、語順は主語・目的語・述語の順で、日本語と同様であるとの事である。日本語~韓国語の近い関係がうかがえる。

韓国は、日本同様天然資源にはあまり恵まれておらず、必然的に貿易立国を目指すことになる。ここで韓国と日本についての主要項目の比較を行う。

        日本    韓国
人口     1.264    0.483  億人 日本の人口は韓国の2.6倍

特殊出生率 1.39    1.24  一人の女性が生涯に産む子供の数の平均
                   韓国は日本以上の少子化である。
国内総生産 437     81   兆円
GDP/人  346    168   万円/人
年間発電量 9500    4750  億kw
電力量/人 7520   9830  kwh/人 韓国人は日本人の1.3倍電気を使う
    
電気料金
 産業用  0.158   0.058  $/kwh 日本は韓国の2.7倍
 住宅用  0.228   0.077  $/kwh 日本は韓国の3.0倍

韓国は『発送電分離』が行われている。
韓国電力公社KEPCOは送配電を行う公社であり、株式の51%を国が保持している。
韓国電力公社は下記の6つの発電子会社を持っている。
  1. 水力・原子力発電会社
  2. 韓国南部発電会社
  3. 韓国中部発電会社
  4. 韓国東西発電会社
  5. 韓国西部発電会社
  6. 韓国南東発電会社
韓国のエネルギー政策は、『極東のフランス』を目指しているようである。
『発電電力量の構成比』をフランス・韓国・日本・ドイツについて下記に示す。
(2008年統計)単位: %

        フランス    韓国     日本     ドイツ
原子力   77.1       34.0     24.0      23.5
石炭       4.8       43.2     26.8      46.1
天然ガス   3.8       18.3     26.3      13.9
石油     1.0         3.5     13.0      1.5
水力     11.2        0.7       7.1      3.3
その他    2.1       0.3      2.8      11.8

韓国の原子力発電の特徴を、下記に列記する。

  1. 設備利用率が極めて高く95%以上である。
    米国90%・フランス76%日本58%である。日本は経産省告示で利用率は高くできない仕組みである。
  2. 韓国は国策として、今後原子力発電所の改良と標準化を進め、国内の原子力発電所の増設を急ピッチで進めるとともに、原子力発電所の輸出も推進する。
  3. 原子力発電所用の燃料集合体製造工場を持っているが、『ウラン濃縮工場』は持っていない。濃縮ウランは輸入している。
    日本はウラン原材料の『イエローケーキ』を輸入し、低濃縮ウランを製造している。
  4. 韓国は、原子力発電所で発生する『使用済み燃料』は、『使用済み燃料保管プール』中に保管するだけで、『核燃料再処理』は行わない。
    日本は、『日本原燃株式会社』で再処理することになっている。
    青森県六ケ所村に工場を建設中である。いつまで経っても受け取り試験に合格せず、試運転期間は延長に次ぐ延長を重ねている。目下のところ、完成予定は2013年10月』となっている。
  5. 天然ウランを燃料とするCANDU型原子力発電所を4基持っている。
  6. 韓国の軽水冷却型原子炉は、全て加圧水型(PWR)である。
    日本では、加圧水型と沸騰水型(BWR)の2型式がある。福島第1発電所の事故炉は、沸騰水型のもっとも古い型式(マークⅠ型)の輸入炉であった。
  7. 今後韓国で続々と増設される予定の、新しい原子力発電所はすべて加圧水型である。
  8. 2021年では、韓国の原子力発電所の総数は、32基になる。
    人口割にすれば、日本に比べ極めて多い原子力発電所を持つことになる。
    日本に比べ、1/3程度の極めて安い電力単価と豊富な電力供給量は、経済競争力において圧倒的な差を生むことになる。
日本に比べ、韓国の電力単価が極端に安い理由を下記に示す。
  1. 韓国は、『発電事業』と『送配電事業』が分離されている。
    送配電事業』は公社が行っており、多少赤字気味でも電力単価の値上げをしない。
  2. 日本は、『脱原発』・『卒原発』を全く不用意にやたら宣言しており、足元を見透かされて電力会社は、ジャパンプレミアムで特別高いLNG(液化天然ガス)の長期購入契約を結ばされている。
  3. 日本の電気料金は、総原価方式であり、発電費用に比例して利益金の額も多くなる。
    電力会社は、発電原価が高くなる方をむしろ歓迎する。
    ジャパンプレミアムは気にしない。歓迎する方だと思われる。
原子力発電の分野では、日~韓の間での重要な部分で補完関係が成立し、相互の技術協力は極めて有効であると思われる。今後とも日・韓の友好関係を堅持し原子力における協業関係を深めてゆくのが相互の利益になると思われる。
ただしアメリカは、「核不拡散」を理由に『日韓原子力技術協力』には圧力をかけてくる恐れは多分にある。アメリカとの折り合いはうまくつける必要がある。

  1. 日本が韓国に原子力発電所用燃料の低濃縮ウランを供給する。
  2. 日本は韓国の原子力発電所『使用済み燃料』の再処理を行う。
  3. 再処理後の『再処理燃料』と『高放射性廃棄物』は、両国で夫々自己分を管理する。
  4. 日本は韓国の原発運転管理技術(安定した高稼働率)や運転管理機構等を学ぶ。
以上




  

2012年10月10日水曜日

福島第一原子力発電所の事故調査報告

2011年3月11日に発生した大震災と大津波で、福島第一発電所の原子炉は炉心溶融事故を起こしました。事故の詳細な経緯の解析やその後の処理等については、主として4つの機関から、調査報告書が出されております。

        名称                  委員長             提出時期

国会 東京電力福島原子力発電所   黒川清                 2012年7月5日
    事故調査委員会           元日本学術会議会長

政府 東京電力福島原子力発電所   畑村洋太郎              2012年7月23日
    における事故調査・検証委員会  東大名誉教授

民間 福島原発事故独立検証委員会  北澤宏一                2012年2月27日
                          前科学技術振興機構理事長     

東電 福島原子力事故調査委員会   山崎雅男               2012年6月20日
                          東電代表取締役副社長:当時

  • 国会の報告
事故は『人災』であると結論しています。提案の実施計画とその進捗を国民に公表することを国       会に求めています。
  • 政府の報告書
地震・津波の自然現象に起因するが、『人為的な様々な問題点が存在』したとしています。
政府・関連機関に対し、提言の実施とフォローを求めています。

  • 民間の報告書
『人災』の性格が濃厚としています。これは東電が「全交流電源喪失事故」の備えを怠ってきた結果であるとしています。
それを許容した『規制当局』も、同罪としています。

  • 東電の報告書
津波の想定については、最新知見ににもとづき対策努力をしてきたものの『結果的に甘かった』と反省しています。これでは実際的には、『津波対策を怠った言い訳』にしかなっていないようです。


事故状況を整理してみます。

①震災時、1~3号機は、運転中でした。炉心が溶融して、水素が多量に発生し、原子炉建屋・タービン建屋共に『水素爆発』で大破しました。2号機原子炉建屋はブローアウトパネルが損傷し解放状態でした。
4号機は定期点検中で、炉心溶融事故はありません。しかし3号機のタービン建屋から水素が回り込み、4号機も『水素爆発』で大破しました。
5・6号機は、やや離れた別の高所にあります。定期点検中で、炉心溶融事故はありません。水素爆発もありません。

事故状況の写真を次に示します。『政府事故調』の資料から引用しました。
3号機原子炉建屋の損傷状況です。

 

参考までに、事故以前の『福島第一原子力発電所』の全景写真を示します。

南から北に向向けて撮影された写真です。

手前から1~4号機、やや離れた高所に5・6号機があります。

提供は東京電力(株)です。


炉心溶融した原子炉の型式は『沸騰水型(BWR) Mark-Ⅰ』です。
この型の原子炉は、格納容器の構造が複雑で、格納容器体積が小さかったのです。
これ以降の改良型BWRや、他社の加圧水型原子炉(PWR)に比べ、安全上の問題点が多かったようです。

1~4号機は2012年4月20日廃炉が決定されました。
福島第一原子力発電所の6号機は『Mark-Ⅱ型』です。

中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の1・2号機は『BWR Mark-Ⅰ』です。
2009年1月30日をもって「営業運転」を終了しました。恐らく廃炉となるでしょう。
3・4号機は、『BWR Mark-Ⅱ改良型』です。


以上

2012年9月1日土曜日

北朝鮮外交

赤十字を通じて、北朝鮮における日本人の遺骨収集の協議が行われる由であり、誠に喜ばしく思っています。これを契機に、日本・北朝鮮関係の改善が急速に進展することを切望する。

現在の日本・北朝鮮関係は極めて険悪な状況のままに置かれていると言っていい。
その主因となっているのは、北朝鮮の核兵器保有とミサイル開発である。これは日本側の言い分である。
北朝鮮側の立場で言えば、『「核ミサイル」は、北朝鮮存続のための不可欠の兵器である。』と言うことになる。

『異論な話:日韓講和条約と竹島問題』で記載したように、『朝鮮にある唯一の合法的な政府は「大韓民国政府」である。』と日本国政府が認めている。従って「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」は、「他の非合法的な政府」と言う地位に相成ってしまう。
この様になってしまった根本原因は、国連議決第195号(Ⅲ)である。

1948年、国連は朝鮮半島全体に自由選挙を実施しようとした。これに対し北朝鮮を事実上支配していたソ連は「自由選挙」を拒否した。南朝鮮は「自由選挙」を実施し、1948年7月20日『李承晩:イ・スンマン』氏が大韓民国初代大統領に選出された。国連議決第195号(Ⅲ)は、、『朝鮮にある唯一の合法的な政府は「大韓民国政府」である。』としている。

ただし、日本国も「大韓民国」・「朝鮮民主主義人民共和国」も当時の国連には未加入であった。日本国が国連加盟を認められたのは、1956年12月18日であり、「大韓民国」・「朝鮮民主主義人民共和国」の加盟は、日本加盟から遅れること35年、1991年9月17日である。

日・独・伊をはじめ、第2次世界大戦の枢軸国側であった全ての国が国連加盟を果たしているのであるから、国連憲章の『敵国条項』は削除されるべきであろう。
国連分担金の分担率(2012年)を下記に示す。

①米国      22.000 %
②日本      12.530
③ドイツ       8.018
④英国       6.604
⑤フランス     6.123
⑥イタリア     4.999
⑦カナダ      3.207
⑧中国       3.189
⑨スペイン     3.177
⑩メキシコ     2.356
安保理常任理事国の一つであるロシアは、⑮位1.602である。
安保理常任理事国全体の分担金分担率は40%弱でしかない。常任理事国は絶大な権限と『拒否権』を持っている分担金分担率は合計で50%以上とするのが当然であろう。
以上

国連の話で、若干回り道したようである。非合法的な政府とどう付き合うかと言う本題に戻る。
北朝鮮が核兵器を持ち、ミサイル実験を行った事に対し、日本国は報復措置として、北朝鮮に対する経済制裁を行っている。経済制裁は、場合によっては戦争にまで至る『危険な国家リスク』を孕んでいる。太平洋戦争は、アメリカの対日経済政策が引き金となってしまった。経済制裁を行う場合、相手国との戦争もあり得るものと心得るべきだ。
日本国内は、ほぼ全てノドンミサイルの射程内であり、主要都市はミサイルの標的となっていることは間違いない。

北朝鮮との外交交渉は、小泉純一郎首相の『平壌宣言:ピョンヤンセンゲン』から始まったと考えていい。小泉純一郎首相は、機を見るに敏でフットワークも軽快であった。同首相の最大の功績の1つが『平壌宣言』である。

『平壌宣言』は、2002年9月17日日本国小泉純一郎総理大臣と朝鮮民主主義人民共和国金正日(キム・ジョンイル)国防委員長が平壌(ピョンヤン)で会談し、宣言したものである。
宣言内容の要点だけを下記に箇条書きする。

①2002年10月中に国交正常化交渉を再開する。諸問題に誠意をもって当たる
②日本国は植民地支配の歴史事実を認め、反省と陳謝を表明した。
  交渉において、経済協力の内容等誠実に協議する。
  1945/8/15(大日本帝国の敗戦日)以前の財産と請求権は相互に放棄する。
③国際法を守り、安全を脅かす行為をしないことを確認した。
 『拉致問題』については、日朝が不正常関係にあるとき生じた遺憾な問題である。
 今後再発しないことを確認した。
④双方は、北東アジアの関係諸国間で、相互信頼の協力関係の枠組みの整備が重要であると認     識した。
  朝鮮民主主義人民共和国は、ミサイル発射モラトリアムを2003年以降も継続してゆく。
以上

北朝鮮に『拉致問題』を認めさせたのは、小泉外交の大成果である。この後順次、地村家族・蓮池家族・曽我家族が帰国した。横田めぐみさんの娘だけは北朝鮮に残されている。
2004年には日・朝実務者協議が数度行われ、その他の拉致被害者の消息に関する議論が行われた。北朝鮮側が『備忘録』を発表し、日本側が『備忘録に対する反論』を発表した。実務者協議は喧嘩別れになっている。北朝鮮側は『備忘録』で継続審議扱いにしたかったのであろう。
日本政府側が、拉致被害者家族の感情に引きずられて、外交の本筋を見失った様である。
国交正常化に誠意をもって当たると双方が誓ったのである。実務者協議がどうであれ、国交正常化交渉を優先して、粘り強く折衝すべきであった。
北朝鮮側の言い分の大筋は、私にはよく理解でき正当だと思う。『平壌宣言』に基づき、生存拉致被害者は全員帰国させた。『これ以上無い袖は振れぬ。国交正常化の話を進めて欲しい。』と言っているのである。

こんな状態のまま北朝鮮外交は放置され、北朝鮮は核兵器を保有し、「人工衛星打ち上げと称するミサイル発射実験」を行った。

日本外交の基本的な間違いは、米国の核の傘で守られているという思い込み』である。日本が核攻撃を受ければ、米国が相手国に核ミサイルを打ち込んでくれると思うのは、笑い話にもならない勝手な思い込みである。米国が核ミサイルを発射するのは、米国本土が直接核ミサイル攻撃を受けた時だけである。

日本国は、広島・長崎に原爆を投下され、無辜の市民30万人が虐殺された世界唯一の被爆国である。毅然とした態度で、骨太の『核兵器廃絶の外交方針を全世界に示すべきである。インド・パキスタンを含めて、核兵器保有国には一円の経済援助も行わないことを宣言しなければならない。

北朝鮮の核兵器廃棄が確認されるまで、日本国は北朝鮮に対し一円の経済援助も行わない決心が大切である。
これだけの心の準備が整えば、北朝鮮との外交交渉は『万全の備え』となる。

いささか過激な話を続けたようである。毅然とした態度は必要であるが、当面は北朝鮮が普通の国になってくれれば事足りると思う。核兵器やミサイルを持っていても致し方がない。
日本国は、核兵器やミサイルを持っている多くの国と、普通に付き合っているではないか。国交を持ち貿易が盛んになれば、お互いに必要な国になるのである。
先ずは経済制裁をやめ、国交正常化交渉の糸口を見出すことが先決である。
以上

2012年8月26日日曜日

日韓講和条約と竹島問題

日本国政府は、竹島問題を棚上げしたまま「日韓講和条約」を締結した。領土問題の紛争を抱えている事についての当事者間の認識は一致しているため、『竹島問題』を紛争事項として取り敢えず「ペンディング」にしたまま、条約交渉を成立させた。日本国政府は佐藤栄作内閣、韓国は第3代大統領朴正煕(パク・チョンヒ)である。
両首脳は賢明であった。日本国外務大臣椎名悦三郎と高杉晋一、韓国側は大韓民国外務部長官李東元・特命全権大使金東祚が1965年6月22日署名。批准による効力発生は1965年12月18日である。

条約の正式名称は『日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約「韓国との基本関係条約」』である。

内容の概略は、下記である。


第一条 外交・領事関係開設。
第二条 1910/8/22以前に大日本帝国と大韓帝国で締結された全ての条約・協定はもはや
    無効であると確認される。(日韓併合条約とそれ以前の条約)
第三条 大韓民国政府は、国連総会議決第195号(Ⅲ)により、朝鮮にある唯一の合法的
    な政府であると確認。
第四条 (a)日・韓は、相互関係で国連憲章の原則を指針とする。
    (b)日・韓は、相互福祉・共通利益の増進で、国連憲章の原則で協力する。
第五条 日・韓は、通商関係の協定締結のため交渉を開始する。
第六条 日・韓は、民間航空関係の協定締結のため交渉を開始する。
第七条 この条約は、批准書の交換の日に効力を生じる。
以上

関連条約として「財産・請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」がある。ここでは『財産・請求権・経済協力協定』と略称する。

1965年のこの協定で、韓国に対し日本国政府は、無償3億ドル・有償2億ドルの政府経済援助と民間融資3億ドルの支援を行った。当時の日本の外貨準備は高々18億ドル程度であり、相当以上に思い切った韓国援助を行ったものだと感心する。ちなみに当時の韓国の国家予算は3.5億ドル程度である。
当初日本政府は「韓国人への個人補償は日本政府が行う」と提案していたが、韓国側が拒否した。本協定では韓国政府が一括して経済協力金を受け取り、韓国政府の責任で韓国人の個人補償を行う事で合意している。

2010年韓国政府は突如として、『慰安婦・樺太残留韓国人・原爆被害韓国人』は別だとして、日本政府に誠意ある措置を要求してきた。日本政府も困惑したと思うが、『別だとする論拠』が私にはよく分からない。

さて本論の重要な課題である『竹島問題』である。

右図は外務省の資料からの引用である。

日韓講和条約では、『竹島:独島(トクト)』問題は、紛争問題であると共通認識し、意図的に棚上げされてしまった。

竹島問題』の事の発端は、1950年の「朝鮮動乱」である。
1950年6月25日、朝鮮半島の北緯38度線で殷々と砲声が轟渡り、「朝鮮民主主義人民共和国」軍が、大挙して「大韓民国」に雪崩込んできた。
朝鮮動乱』である。開戦当初は北朝鮮軍が圧倒的に優勢であり、韓国軍側は敗退に次ぐ敗退を続けた。1950年9月には韓国領土の大部分を席巻され、釜山周辺をやっと維持する状態にまで圧迫されていた。

国連安保理は、朝鮮動乱直後1950年6月27日「北朝鮮弾劾決議」を全会一致で議決した。7月にはアメリカ軍25万を中心に『多国籍軍』が編成され、「国連旗」の使用も認められ、反撃の準備が進められていった。
1950年9月15日米海兵隊を主力とする約7万人の「仁川上陸作戦」が敢行され、朝鮮半島の戦局は急変した。仁川(インチョン)は、韓国の首都ソウルの近郊の港である。北朝鮮側は、伸びきった戦線に対する補給網が追いつかず、問題であった。そこに「仁川上陸作戦」による補給路遮断が行われたので、北朝鮮側の総崩れとなった。
韓国南端まで伸びきっていた「北朝鮮のアコーデオン」は、瞬く間に縮んでゆき、北端の鴨緑江(朝鮮名アムノク:中国名ヤールー)付近まで圧縮されていった。

『北朝鮮壊滅』が目前に迫ったとき、「中華人民共和国」は国境線の鴨緑江(ヤールー)を越えて、北朝鮮に援軍を送り続けた。
多国籍軍』の繰り返しの攻撃にひたすら耐えながら、果てしなく陸続と続く援軍の列に世界中が驚嘆し、「中華人民共和国」の『人海戦術』と呼称し、いたく称賛した。

この『人海戦術』の大援軍により、中・朝国境付近まで圧縮され壊滅寸前の「北朝鮮のアコーデオン」は、北緯38度線付近の正常位置まで引き戻されてしまった。38度線付近の最前線の位置で睨み合いが続き、『多国籍軍』と北朝鮮軍との休戦協定ができあがった。1953年7月27日である。朝鮮動乱は1950/6/25から始まり、1953/7/27に終焉した。

朝鮮動乱の最中、韓国初代大統領「李承晩:イ・スンマン」が「李承晩ライン」を設定し「海洋主権宣言」を一方的に行った。
1952年1月18日、日本海および東シナ海に韓国政府が一方的に軍事境界線を設定した。韓国では『平和線:ピンファソン』と呼称する。国際慣行を全く無視した、非合法な宣言であった。
平和とは全く裏腹の、武力による韓国漁業の専管水域の設置宣言である。「平和線」を越えた日本漁船は片っ端から拿捕され、日本漁民の抑留者は4千人近くに達してしまった。
この一方的で違法な李承晩の『平和線を越えたところに、我が日本領土の竹島が存在していたのである。当然日本国外務省は、韓国政府に強硬に抗議した。アメリカ合衆国も「国際法上の慣例無視」と強く抗議した。在日米軍は、竹島付近を爆撃訓練区域にしていたのである。

しかるに、韓国政府は話し合いに応ずる気配を全く見せず、馬耳東風を続けながら、警備員の上陸と不法占拠等を重ね、既成事実の積み上げを目論んでいった。誠に遺憾千万である。

尖閣諸島や竹島や国後・択捉の領土問題は、とにかく国民感情をあおり易い。民族の闘争本能を大きく揺さぶるのである。
政治家が領土問題で騒ぐとき、沈着冷静な国民は、その政治家の隠された真意を見抜く目を持たなければならない。落ち目の政治家ほど「領土問題の国民感情」を利用したがるものである。

竹島問題』では、2013年2月任期満了の第10代大統領李明博:イ・ミョンバク』氏が、このほど「竹島上陸」を行った。内政干渉するつもりは全くないが、大韓民国・国民の冷静な判断を期待したい。

『尖閣問題』では、東京都知事『石原慎太郎』氏が東京都として「尖閣諸島」購入の意思表示をしている。知事の任期は2015年4月でだいぶ先であるが、子息の衆議院議員『石原伸晃』氏の改選時期は間近である。
東京都が何故「尖閣諸島」の土地を購入する必要があるのか理解に苦しむ。その土地がどうしても欲しいなら「石原慎太郎」個人で購入すればよい。
東京都民のみなさん、皆さんが「尖閣諸島の土地の名義」を必要としているのでしょうか。

「尖閣諸島」は、日本国が現に実効支配しており、中華人民共和国・台湾が後から嘴を入れてきた話である。日・中・台の国民感情を、いたずらに刺激し先鋭化させることは愚の骨頂である。先鋭化を極力回避し、そっと静かにしているのが一番賢明な最善策と思う。
石原知事殿、お静かにお願いしたい。ひたすらお静かにお願い致したい。
以上

2012年8月11日土曜日

プロメテウスの火

旧約聖書では、人類最初の女性は「イヴ」である。アダムとイブは「知識の木」の『禁断の果実』を食べたために、「エホバ神」により「エデンの園」から追放された。

日本神話では、天上の高天原(たかまがはら)から伊邪那岐(いざなぎ)・伊邪那美(いざなみ)の命(みこと)が、くらげなす漂へるところに、天沼矛(あまのぬぼこ)を入れてかき回し、引き上げて、『豊葦原千五百(とよあしはら・ちいほ)秋の瑞穂の国』即ち日本列島を作られた。
その後、高天原から高千穂の峰を通って瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が日本国に天下り、統治した。以来『天下り』の伝統は日本の官僚機構に温存され、独立行政法人等への『天下り』が、古式床しく今も行われている。
しかし残念ながら、日本列島の最初の女性が、誰であったのかは定かでない。

ギリシャ神話では、人類最初の女性は「パンドラ」である。神々によって『人類の災い』として地上に送り込まれた様である。このため我々は、『人類の災い』と懇ろ(ねんごろ)に仲睦まじく暮らしてゆく術をしだいに会得してゆき、ついに今日の人類の繁栄を見るに至った。慶賀至極である。

神々は「パンドラ」に箱を与え、「決して開けてはならぬ」と申し渡した。しかし「パンドラ」は、その後に好奇心に駆られて、ついに『パンドラの箱』を開けてしまった。箱からは様々の災難が飛び出してきて、あわてて箱を閉めてしまった。箱の中には『希望』だけが唯一つ取り残されてしまった様である。
「パンドラ」の夫は「エピメテウス」である。「エピメテウス」の兄が、有名な「プロメテウス」である。人類最初の女性「パンドラ」は、「プロメテウス」の義理の妹であった。

「プロメテウス」は人類に火を与えたので、「ゼウス」の怒りに触れ、カウカソスの山頂に生きながら張り付けにされた。私は『パンドラの箱』の中にあった様々の災難の一つが「プロメテウスの火」ではなかったかと思っている。

プロメテウスの火』という本がある。ノーベル賞受賞者・朝永振一郎博士の著書である。人類が原子力の『パンドラの箱』を開けた事に対する、核物理学者の苦悩が書かれていると聞く。

どなたが原子力を『第二のプロメテウスの火』と呼んだのか、私はよく知らない。『第二のプロメテウスの火』は、広島と長崎で合計約30万人の無辜の市民を虐殺する、凄まじい威力を持っていた。「ゼウス」は何故これを怒らないのだろうか。マッキンリー(北米大陸の最高峰)の山頂に、誰を張り付けにすればいいのだろうか。怒れ「ゼウス」よ。

プロメテウスの火は、人類に文明の灯を燈した。しかし文明の灯はやがて火薬を産み、銃砲弾となって人類を殺戮した
「イヴ」か「パンドラ」の末裔たちは、血塗られた歴史を繰り返している。初めは、刀剣や槍が武器であったが、吹矢や弓の飛び道具が発明され、火薬が発明されてからは、銃砲が武器の主役になってしまった。

日本人が最初に火薬に遭遇したのは鎌倉時代である。蒙古・高麗(コウライ)連合軍が元寇として、対馬・壱岐・九州に襲来した(文永の役:1274年)。この時蒙古・高麗軍が「てつほう:鉄炮」を使用した。直径20センチ程度の球状の陶器で、内部に鉄片や青銅片を火薬・硫黄と共に詰めたものである。逃げる時に炸裂させたものと推定される。長崎県松浦市鷹島の海底遺跡から、元寇の「てつほう」が引き上げられている。

蒙古・高麗軍4万人は、千艘の船団で対馬・壱岐を席巻した。対馬守護代・宗資国(そうすけくに)は、80余騎で応戦し戦死。壱岐守護代・平景隆は100余騎で応戦、翌日自城にこもって自害。蒙古・高麗軍4万人は、対馬・壱岐を征圧した後、数日を経てから博多湾に上陸した。
日本軍は、総大将少弐景資や大友氏・菊池氏その他の御家人たちが大宰府に結集し、蒙古・高麗軍の撃退を図った。日本軍は頑強に抵抗し善戦したようである。蒙古・高麗軍は敗北し、船団は博多湾から退去した。

火薬の話から筆が走って、文永の役の概説まで書いてしまった。6年後再び元寇があった。弘安の役(1281年)である。この時は暴風雨のため元寇の船団は壊滅的な打撃を受け退去し、弘安の役も日本軍の大勝利に終わった。

日本人が「てつほう」に遭遇してから270年ほど後に、種子島の鉄砲伝来(1543年9月/23日)があった。種子島に漂着した中国船にポルトガル人が乗船しており、鉄砲の試射実演をして見せた。島主・種子島恵時は2挺を購入し国産化の研究を命じた。
国産化技術は、堺の商人と根来の僧により本土に持ち込まれ、大量生産が始まった。

長篠の合戦が行われたのは、鉄砲伝来からわずか30年年余り後である。天正3年(1575年)7月9日織田・徳川連合軍は、愛知県新庄市設楽が原(しだらがはら)の決戦場で、3,000挺の鉄砲で武田勝頼軍を猛射し、大打撃を与えて敗走させた。
『プロメテウスの火』は、日本においても恐ろしい勢いで燃え広がっていったのである。

現代における『プロメテウスの火』は、石油・石炭・天然ガス(LNG)等の燃料に受け継がれ、今日の文明を支える基盤となっている。
その一方で、爆薬ともなっていて、銃砲弾・爆弾・ミサイル等として巨大な量が製造・貯蔵されている。大戦争ともなれば、何百万人もの犠牲者が出るだろう。
20世紀は、将に殺戮の世紀であった。20世紀において、全世界で1億人近くが戦争で死亡している。

『プロメテウスの火』のもっとも平和で華麗な転身は、花火であろう。夏の夜空に、巨大で華麗で彩豊富な花を咲かせて見せてくれる。誠に絢爛豪華で、瞬く間に消えてゆく可憐なプロメテウスの火である。

プロメテウスの火は、人類の豊かで幸福な生活や様々の災難を綯交ぜ(ないまぜ)にした、文明そのものである。災害の被害を減らし生活を豊かにするために、「イヴ」や「パンドラ」や「瓊瓊杵尊」の末裔たちは、知恵を絞り努力を重ねて今日の文明を築き上げてきた。

災害の被害を減らし豊かな暮らしを求めて、人間たちは果てしなく知恵と努力の積み重ねを続けている。これは、エデンの園で「知恵の木」の「禁断の果実」を味わった、人類の原罪である。人間である以上この努力を止めるわけにはいかない。

1867年11月7日、マリア・サロメ・スクロドフスカがポーランドで誕生した。彼女こそが『第2のパンドラの箱』を探し出した女性である。ここではその箱を、『マリアの箱』と呼ぶことにする。その女性は、ノーベル賞を2度受賞した、「マダム・キューリー」その人である。

マリアの箱』には、様々な災難として放射能放射性元素が沢山入っていた。「パンドラ」と同じように、「マダム・キューリー」は『マリアの箱』を自分で開けてしまった。彼女は、『放射能・放射性元素の概念』を明確にし、ウラン・トリウム・ラジウム・ポロニウム等が放射性元素であることを発表した。ただしトリウムについては、ドイツの「ゲアハルト・シュミット」が、トリウムの放射線を全く独立に発見し、2か月前に発表していた。

マリアの箱』には、『第2のプロメテウスの火』が詰められていたのである。「マダム・キューリー」は、『マリアの箱』を開けたまま、1934年に他界した。開けられた時、放射能や放射性元素の様々な災難が飛び出してきたが、未だ箱は閉じられてはいない。したがって、「パンドラの箱」に残ったままであった『希望』も、『マリアの箱』の底の方からこの世に出てきたに違いないと、私は信じている。
これからは、人類の知恵と努力で、『第2のプロメテウスの火』をうまく取り扱える技術や機構を、全世界で作り上げなければならないと思う。ヒステリックに悲鳴を上げるだけでは事は収まらない。人間の原罪と心得て、希望を持って努力を重ねるべきである。
以上

2012年8月2日木曜日

日本の総人口の推移予想

● 『死亡率

総人口の推移予想で極めて重要な統計資料は、「死亡率」と「出生率」である。「死亡率」とは年齢毎の1年間の「死亡者数/(死亡者+数生存者数)」の比率である。通常「10万人中1年間で死亡する人数」で表す。

右の図は、2010年の「死亡率」である。厚生労働省大臣官房統計情報部動態・保健統計課のデータから作成した。縦軸が死亡率、横軸が年齢である。70歳位から、加速度的に急上昇する。
40歳までの「死亡率」を、次の図に示す。男女とも8~9歳「死亡率」最低で、10万人中9人程度の「死亡率」である。

8~9歳を過ぎると「死亡率」に『顕著な男女差』が出てくる。男性は女性の倍近い「死亡率」になってしまう。


● 『平均余命』

死亡率に関連するもう一つの統計項目として、『平均余命』がある。
日本人の当人の年齢から、あと何年生きられるだろうかを知る目安となる。日本人の『平均寿命』は、日本人の「0歳児」の平均余命である。

平均余命も平均寿命も『現在の生存者の半数が死亡するまでの期間』である。単純に言えば、生存者の半減期である。
ともがらの半数が他界するのだから、老人にとっては辛い言葉であろう。

右の図は、厚生労働省の平成21年「簡易生命表」から作成した『日本人の平均余命グラフ』である。平成21年(2009年)のデータである。

縦軸が『平均余命』、横軸が『年齢』である。20歳の男性の「平均余命」は60年であるから、60年後(80歳になるまでに)半分の人が他界する。70歳の女性の「平均余命」は20年であるから、20年後(90歳になるまでに)半数の人が他界する。



● 『出生率』

「出生率」についても、年齢別に『一人当たり1年間に、平均何人の子供を産むか』の統計がある。

右の図は、2009年のデータにより作成した。
またこれらのデータにより、『合計特殊出生率』が算出される。

● 『合計特殊出生率

これは『一人の女性が、一生涯に産む子供の数の平均値』である。『合計特殊出生率』が2.08を下回ると、その国の人口は次第に減少してゆく。

各国の『合計特殊出生率』を以下に記載する。
2011年頃のデータである。
    1. 韓国        1.24
    2. 日本        1.39
    3. イタリア      1.41
    4. アメリカ      1.93
    5. スウェーデン    1.94
    6. イギリス       1.96
    7. フランス       2.00
日本の『合計特殊出生率』は、1975年頃から2.0以下となり漸減を続け、2005年最低値1.26となった。その後若干上昇に転じ2011年ほぼ平らで1.39となっている。

現在の大和撫子達は、晩婚傾向が進み、一生涯に平均1.39人の子供しか作らない。従って当面は、日本の人口減少が進むことになる。

● 『日本の人口推移

総務省統計局は、2010年以降の日本の総人口の推移を推定計算している。そのデータをもとに、グラフにしたものが右図である。

2010年の人口が1億2,800万人。今世紀末の2100年の人口は、4,800万人程度である。現在の38%程度の人口になると予想している。

私は、これで良いのだと信じている。

①  国内総生産
真面目で勤勉で利口な日本国民は、人口減少の割合に比べて、国内総生産の落ち込
みは相当以上に緩やかな減少に食い止めると思う。

② 食料自給率
農水省は、「カロリーベース総合食料自給率」と「生産額ベース総合食料自給率」の2種類の統計項目を作っている。
     ● カロリーベース総合食料自給率    39%  2010年
     ● 生産額ベース総合食料自給率     69%  2010年
農水省は、「カロリーベース」を50%以上にするのが悲願の様である。私は貿易立国日本の立場から「生産額ベース」69%の現状で既に十分である』と信じている。

今後人口減少が続けば、例え農水省が無為無策でいても、「カロリーベース」50%以上は、いずれ達成されるであろう。

 ③ 遺産相続
先人たちが残した様々の膨大な遺産は、数少ない子孫たちが受け継ぐ。一人あたりの遺産額は相当大きなものになって行く。裕福な子孫たちよ。

④ エネルギー資源
自然エネルギー利用が進み、人口減少に伴って、国内の原子力発電は不用になる。
自然エネルギー利用の進展と人口減少、メタンハイドレート採掘利用等で、燃料輸入量が大幅に減少する。国内CO2発生量は低下してゆく。

⑤ 待機児童の減少
当面は、保育所不足が問題の様であるが、いずれ間違いなく解消されてゆく。

物事には全て、「良い面」と「克服すべき問題点」がある。
「非難」や「反対」は楽である。「克服すべき問題点」だけを声高に主張すればよい。
しかし物事を推し進めるためには、、「良い面」と「克服すべき問題点」の両方に良い解答を出さなければならない

人口減少の大きな問題点は下記である。

 ① 赤字国債の処理
現在の赤字国債の累積額は1,000兆円を超えている。しかも毎年の赤字国債の発行高は50兆円程度である。2075年には日本の人口は7,000万人以下になる。
この時の国債累積残高は4,000兆円程度になってしまう。国民一人当たり6,000万円程度の政府の借金を背負うことになる。
現在でも国債残高は、GDPの2年分程度であり、「国債残高」/「国内総生産」の比率は、先進国ではワースト1である。
破滅の道を抜け出るためには、『税制の抜本改革』か『インフレ』以外に打つ手は無さそうである。

② 小さな政府・小さな議会の実現
これから人口は顕著に減少してゆくのだから、人口減に見合う議員数・官僚人数の削減が必須・喫緊の課題である。しかし一度膨らんだものを小さくする事には、強力で根強い反発があり大変な労力を払わなければ成就できない。

③大学の整理統合
人口減少により、受験生の数は年毎に減少し、優秀な学生を集めるのが困難になる。
大学の統合整理と、海外留学生の受け入れ拡大が将来の課題となるだろう。
以上

2012年7月11日水曜日

韓国の原子力発電










左上の図は「ウィキペディア」からの引用である。
  • 蔚珍原子力発電所(ウルジン・ウォンジャリョク・バルジョンソ)
  • 月城原子力発電所(ウォルソン・ウォンジャリョク・バルジョンソ)
  • 古里原子力発電所(コリ・ウォンジャリョク・バルジョンソ)
  • 霊光原子力発電所(ヨングァン・ウォンジャリョク・バルジョンソ)
右上の図では、各発電所の基数を知る事ができる。

古里から福岡までは約200kmである。
福島第一発電所から東京までも約200kmである。

エネルギー利用に関しては、韓国は『極東のフランス』を目指しているようである。先ずはフランス・韓国・日本のエネルギー利用事情を紹介する。

2008年統計

国     原子力 石炭  石油  LNG  水力  他       *注 LNG:液化天然ガス
日本   24%   27%  13%   26%    7%   0%
フランス 77%    5%    0%     4%   11%  3%
韓国   34%   43%   4%   18%     1%  0%   

韓国電力公社(KEPCO)の2011年統計では、総発電設備容量7,881万kwの23.7%(1,868万kw)が原子力発電の設備容量である。2010年の年間総発電量4,746.4億kwhの31.3%(1,487.6億kwh)が原子力発電であった。

韓国の原子力発電の設備利用率は極めて高く95%以上である。米国90%・フランス76%・日本58%に比べ非常に高い。

2010年度の対日比較

国   総発電量    原子力         人口        総発電量/人口
韓国 4,746.4億kwh  1,487.6億kwh    0.48875億人    9,711kwh/人
日本 9,064.2億      2,646.7億       1.27451億      7,112

増大する電力需要に対応し、韓国では今後もさらに多くの原子力発電所の建設が計画されている。2010年~2021年に12基の原子力発電所の建設を計画している。2021年までの計画では、原子力発電所の総基数は32基となる。

原子炉    型式          発電容量(万kw)  稼働開始(西暦年)
古里1号   PWR            58.7          1978
古里2号   PWR            65.0          1983
古里3号   PWR            95.0          1985
古里4号   PWR            95.0          1986
蔚珍1号   PWR            95.0          1988
蔚珍2号   PWR            95.0          1989
蔚珍3号   KSNP韓国標準型  100.0          1998
蔚珍4号   KSNP         100.0          1999
蔚珍5号   KSNP         100.0          2004
蔚珍6号   KSNP         100.0          2005
月城1号   CANDOU       67.9          1983
月城2号   CANDOU       70.0          1997
月城3号   CANDOU       70.0          1998
月城4号   CANDOU       70.0          1999
霊光1号   PWR            95.0          1986
霊光2号   PWR            95.0          1987
霊光3号   System80        100.0          1995
霊光4号   System80        100.0          1996
霊光5号   KSNP          100.0          2002
霊光6号   KSNP          100.0          2002
新古里1号  OPR-1000        100.0          2011
新古里2号  OPR-1000        100.0          2011試運転中
新月城1号  OPR-1000        100.0          2012試運転中
新月城2号  OPR-1000        100.0          2013試運転中
新古里3号  APW-1400       140.0          2013試運転中
新古里4号  APW-1400       140.0          2014建設中
新蔚珍1号  APW-1400       140.0          2015計画
新蔚珍2号  APW-1400       140.0          2016計画
新古里5号  APW-1400       140.0          2018計画
新古里6号  APW-1400       140.0          2019計画
新蔚珍3号  APW-1400       140.0          2020計画
新蔚珍4号  APW-1400       140.0          2021計画

韓国は新開発のAPW-1400の実績をもとに、原子力発電所の輸出に力を注いでいる。
原子力発電技術において、日本は韓国に大差をつけられている。このまま放置すれば、原子力技術の差はますます大きくなってゆくと思われる。
日本は「自然エネルギー・循環型エネルギー利用」の方向を目指しているが、韓国も「自然エネルギー・循環型エネルギー利用」技術の開発に決して手を抜いている訳ではない。
以上  

2012年7月4日水曜日

税金

野田総理は、『税・社会保障一体改革』と呼称する法案の成立に、政治生命を懸ける積りの様である。確かに日本国政府の借金を考えると、増税は必要である。
日本国政府の借金は、2012年度末には1000兆円を超えるかもしれない。たとえこの法案が成立し、消費税率が10%になったとしても、1000兆円の借金に比べれば税収増は微々たるものである。こんな些細なことに『政治生命』を懸けず、税制の抜本改革にこそ『政治生命』を懸けて取り組んでほしいと思っている。

私がここで説明したいのは、下記の2項目である。
  • 国家財政の現状
  • 税制の抜本的再検討
1.国家財政の現状


年度    税収等       国債等借金      一般会計総額

H22    47.0兆円      44.3兆円        92.3兆円       当初予算
H23    48.1         42.3           92.4          当初予算
H24    46.1         44.2           90.3          政府案

毎年の税収と国債発行による借金が略同額であり、国債による借金約44兆円が毎年度積算されてゆく。これは我々の債務というよりも、少子高齢化で今後減少してゆくと思われる日本国の子孫たちの債務となって累積される。
野田総理が政治生命をかけて法案を通し、消費税率を5%から10%に上げてみても税収増は高々13兆円程度である。この金額は、これからの国債発行額が若干減る程度の話で、現在の1000兆円の借金が減らせる可能性は全くない


Aランク以上の世界各国の国債。

  • AAA 英・独・仏・スイス・カナダ・オーストラリア
  • AA+ 米・ベルギー
  • AA  カタール・スロベニア
  • AA- 日・中・台・クウェート・サウジアラビア
  • A+  スペイン・イタリア・チリ
  • A   アイルランド.韓国
  • A-  ポルトガル
「国債残高/GDP(国内総生産額)」の比率のワースト5を以下に示す。
  • ①日本      200%
  • ②ギリシャ    150%
  • ③イタリア    125%
  • ④フランス     95%
  • ⑤米国       95%
2.税制の抜本的再検討

税制は、『税制調査会』の答申を受けて政府が決めるのである。ただし『税制調査会』は、政府内閣府内の『税制調査会』と、民主党『税制調査会』の2つが並立している。これらの「税調」は、税制の抜本的再検討を行う気配は全くない。ともかく当面の話が最優先である。何らかの理屈で課税を始めた既得権益は、金輪際手放す気は無いらしい。揮発油税・自動車取得税・軽油取引税・自動車重量税・消費税と、自動車にはやたらに沢山の税金が用意されている。
道路特定財源での高速道路の建設は、もう不要である。道路建設以外で景気浮揚策を考える必要がある。

昨今の官僚と政治家は、とにかく横着になってしまった。取り易い所から取り易い方法で課税徴収する事しか考えていない。これは根本的な大間違いである。
たとえ手間暇かかっても、担税能力のある処から、担税能力に応じて公平・平等に課税するのが本道である。政党交付金を廃止し、政治団体・宗教法人に公平・平等に課税しなければならない。『政治団体』・『宗教法人』を非課税にする根拠は全くない。

憲法第十四条
1 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
憲法第二十条
信教の自由は、何人に対してもこれを保証する。いかなる宗教団体も国から特権を受け、又は政治上の特権を行使してはならない。

以上は憲法上の規定である。ところが昭和26年(1951年)宗教法人法が制定され、宗教法人は公益法人とされている。営利を目的としない公益法人は非課税である。なぜ非課税にするのか、ここのところが全く分からない。
宗教の礼拝設備や境内は、宗教法人が管理し、収益を得る場所である。宗教法人が固定資産税を負担するのは当然である。お布施・拝観料やお守り・イコン等の売り上げ・・・は当然課税対象だろう。僧・神官・神父・牧師・たちは、各種お布施等により生計を営み職責を全うできている。これは職業に対する正当な収入であり当然所得税の課税対象である。また入場料やお守り・お札の売り上げに対しては、消費税納入の義務を負うべきである。

消費税率10%もいいだろう。ただし物品税方式にして、生活必需品は無税、贅沢品は20~50%あるいはそれ以上も有っていい。複雑怪奇な酒税も、もっと単純にすべきだろう。
景気浮揚対策をしっかりやり、税制の大改革を断行し、一般会計が税収だけで賄えるようにしないと、日本国は破滅の道を歩むことになる。すでに示しているように、破滅傾向はギリシャを凌いで世界中で日本がワースト1である

日本の人口が現在の半分6000万人になるのは、2075年頃である。税制大改革が行われない限り、この頃の日本国政府の国債累積額は4000兆円程度になってしまう。我々の子孫は『一人当たり6,700万円程度の借金を背負い込む』ことになっている。こんな事に対して、官僚や政治家が平然として居られるのが不思議である。
以上

2012年4月23日月曜日

北朝鮮の人工衛星打ち上げ失敗

2012/4//13、7時40分頃、北朝鮮は人工衛星『光明星(クァンミョンソン)3号』の打ち上げを行った。
同国北西部・東倉里(トンチャンリ)の西海(ソヘ)衛星発射場から、『銀河(ウーハ)3号』ロケットに搭載した人工衛星の打ち上げである。
ロケットは略真南に発射され、1~2分後高度120km程度まで上昇して爆発し、破片は韓国西方の「黄海」に落下した。北朝鮮には甚だ申し訳ない気がするが、私は失敗で良かったと安堵の胸を撫で下ろしている。

①ミサイル問答
日本の報道では、『人工衛星の打ち上げと呼称する・事実上のミサイル発射』と極めて回りくどい呼び方を繰り返していた。NHKでも似たような耳障りな説明を繰り返し、日本国民に『ミサイル』の印象付けを執拗に試みていた。
日本国民の貴重な歴史的遺産であり、世界に冠たる道徳規範でもある『武士道精神(Sence of Social Justice)』に基づき、今後日本国においては、独立行政法人『宇宙航空研究開発機構』JAXSAが、種子島からH2ロケットで人工衛星を打ち上げる際には、必ず『事実上のミサイル発射』という耳障りな語句を付け加える必要があるものと、私は確信した。

日本のH2ロケットのメインエンジンの燃料は、液体水素・液体酸素であり、燃料装荷に大変な手間暇が掛かる。兵器としての弾道ミサイルにはなり難い。
これに反し、北朝鮮の銀河3号ロケットは、ノドンミサイルがベースとなっているようであり、弾道ミサイルによる衛星打ち上げである。燃料は『ジメチール・ヒドラジン』と推察され、常温で液体であるから、燃料注入にさしたる手間は掛からない。

基本的に、国連が北朝鮮の人工衛星を禁止する権限は持たない。北朝鮮は人工衛星の打ち上げを予め宣言しており、手間暇かけて公開していたのである。何も毎度の報道に、耳障りな語句を恣意的に繰り返す必要はなかったと思う。今回の一連の騒動は、北朝鮮が人工衛星の打ち上げに失敗したのだと、素直に認めてやればいい。

②北朝鮮の気配り
今回の北朝鮮の人工衛星の打ち上げ方法には、きめ細かい配慮がうかがえる。本来なら地球の自転を利用して、東向きに打ち上げるのが定法である。ところが今回は、南向きに打ち上げた。とにかく、海上経由で打ち上げたかった意図がくみ取れる。

前回は、2009/2/5 11:30 「光明星2号」搭載の「銀河2号」ロケットが東向きに発射され、日本の東北地方の上空高度数100km(大気圏外)を通過して太平洋に落下した。前回も人工衛星打ち上げは失敗している。但し北朝鮮は『「光明星2号」の打ち上げに成功した』と、頑強に放送し続けていた様である。
日本の人工衛星打ち上げも、種子島から東に向かって打ち上げ、H2ロケットは洋上を飛翔し太平洋に落下する。

③PAC-3 配備
航空自衛隊は、PAC-3の沖縄への配備に大わらわであった。MIM-104 Patriot が正式名称である。迎撃ミサイルであり、パトリオットの呼称が一般的であるが、自衛隊等の公式名称では『ペトリオット』である。PACは、Patriot Advanced Capability の略称である。

「銀河3号」ロケットが落下してきても、照準操作の訓練だけにして『ミサイル発射』はしないで欲しいと、私は願っていた。
迎撃ミサイルを発射しても、落下物が増えるだけで、かえって危険が増すだけである。かてて加えてもしも命中しなければ、世間の物笑いの種になり、防衛大臣の「参議院の問責決議」だけでは事が収まらなくなってしまう。

④安堵感
とにかく、今回の事の顛末には、ほっとした安堵感が有る。
大騒ぎした割には、大した事はなかった。田中防衛大臣が参議院で問責決議を食らった程度である。北朝鮮も前回の失敗とは大いに異なり、素直に失敗を認めている。かなり普通の国に近づいてきたように見受けられる。

日本国も、なるべく早く北朝鮮に対する経済制裁を止め、万景峰号(マンギョンボンゴウ)の往来を認め、交易再開に努力した方が良い。
北朝鮮は、核兵器とノドンミサイルを持っているが、何時までも敵対視するのは止めたほうが良い。我々は、米・中・露・印等核兵器保有国と普通に付き合いをしているではないか。お互いの経済関係が密接になれば、相互に大切な国同士になるはずである。
以上


2012年4月5日木曜日

世界の燃料消費

米国のオバマ大統領は、イランの核開発に大きな不安を抱いており、イランに対し金融制裁を課している。確かに、イランの核開発は目覚ましく進展している。複数箇所にウラン濃縮工場を建設し、現に濃縮ウランの製造を行っている。当面はイラン南部のBushehrにある原子力発電所用の燃料製造に使用する目的である。

イランは核拡散防止条約(NPT)に加盟しており、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れている。1993年NPTを脱退しIAEAを国外に叩き出した北朝鮮とは大違いである。
(右図はIAEAの旗である。)

イランは、NPTの条約に基づきIAEAの監査を受けながら核開発を行っている。米国から非難される理由がない。
米国オバマ大統領のイランに対する金融制裁の仕打ちは、国際的正義にもとる。米国の「対中東政策」は、イスラム~イスラエルの対立の図式を前提に行われている。イランの核開発は、当然ながらイスラエルにとって我慢のならない大きな脅威なのである。イスラエルは、核兵器保有について『一切のコメントを拒否』している。しかし一般的には「核兵器保有国」と看做されている。もちろんNPTには、最初から加盟していない。

ところが、将来イランが核兵器保有国となった場合、イスラエルの核兵器保有はほとんど無意味になってしまうのである。万一イランから核ミサイルを撃ち込まれると、小さい国土のイスラエルは、核ミサイル1発で壊滅してしまう。一方、広大な国土のイランは、イスラエルから数発の核ミサイルを撃ち込まれても、国が壊滅する事態にまでは至らない。

建国以来、イスラエルは、近隣諸国の核開発に極めて過激に反応していた。1981年サウジアラビヤ経由の飛行ルートで、イラク中部のOsirakにあるイラクの原子炉を爆撃し全壊させている。
しかしながら、イスラエルとイランは1000km以上も離れており、イスラエルが歯ぎしりして悔しがっても、イラク上空での空中給油なしに、イランのウラン濃縮工場を爆撃する事は不可能である。1000km以上の距離は、もはやミサイル攻撃の範囲である。北朝鮮はノドン・ミサイルを中東に輸出しており、射程は1000~1300kmである。イラン東部から発射すれば、イスラエルはノドンの射程内である。

米国にとって、イランの核開発は極めて気懸りであり、強引な金融制裁でイラン締め付けに躍起になっている。日本とドイツは、米国から有難いお目こぼしを頂戴したようである。イランからの石油輸入を減らしているのを評価し『今後もイランから石油を買っていい』との米国のご託宣を得たのである。
私は、「今頃何を言っているのか」といささか驚いた。日本は最近特別に石油輸入を減らしたわけではない。長期間にわたり減らし続けたのだ。過去10年間で日本は30%石油消費を減らしており、ドイツは12%低減させている。

前置きが大変長くなった。本論に戻る。
あらためて、世界の燃料消費について調べてみた。BP社の「Statistical Review of Energy 2010」を眺めていると、様々な事情が見えてきます。以下の議論は、同社のデータを利用した。

①石油消費

世界の5大消費国は、米・中・日・印・露で、トップ5で全世界の石油消費の44~45%を占めている。米国だけで22~24%、中国10%、日本5~6%である。ドイツ7位、イタリア13位、イギリス14位・・・と続くが、フランスはランキングに出てこない。原子力発電が多いためと推測する。
2000~2009の10年間で、米国(25→22%)・日本(7→5%)は漸減、中国(6→10)は急増している。
世界の石油消費は、3600→3900(百万トン)に増加しているので、日本の石油消費の落ち込み(255.5→197.6:百万トン)はかなり大きい

②天然ガス消費

世界の5大消費国は、米・露・イラン・カナダ・中である。トップ5で全世界の45%を占め、米国は22%である。日本6位(3%)、イギリス・ドイツ・サウジアラビア・イタリアと続くが、フランスはやはりランキングに出てこない。これも原子力発電によると考える。
消費の急増は、イラン(2倍/10年)・中国(3.6倍/10年)である。それ以外は「%表示では」略安定している。
日本は3%で安定しているようであるが、世界の消費量が2400→2900億立方メートルに増大しているので、日本の消費も相応(723→874億立方メートル)に増大している。
日本は、石油から天然ガスに少しづつ切り替わっているようである。

③石炭消費

世界の5大消費国は、中・米・印・日・南アフリカである。石炭消費は、燃料用だけでなく、製鉄用にも使われるので、注意が必要である。
中国は10年間で29→47%に消費量を増大させており、目覚ましい経済発展を遂げた。米国は24→15%に減少した。インド(6~7%)・日本(3~4%)は安定している。世界の消費量が2246.7→3408.6(百万トン)と1.4倍に増大しているが、日本は98.9→108.8(百万トン)と微増である。

③ウラン生産量

ウランの消費量は、殆ど統計がない。やむを得ず生産量を調べたが、BP社の「Statistical Review of Energy 2010」には記載なし。
フランスのAREVA社(世界最大の原子力産業複合企業)が国際原子力機関(IAEA)の会議で報告している資料を見つけたので、これを利用した。「2002~2008年の7年間の年別ウラン生産量」である。
総生産量は35→45ktonに漸増している。カナダ10kton・オーストラリア7~8kton程度で安定している。カザフスタン(3→10kton)の伸びが大きい。ニジェール等アフリカ諸国の産出量も10kton程度で、漸増である。「other CIS」は8kton程度で安定している。『other CIS』とは、カザフスタン以外の『独立国家共同体』の意味である。『独立国家共同体』とは、ロシア・カザフスタン・タジキスタン・ウズベキスタン・キルギス・ベラルーシ・アルメニア・アゼルバイジャンの8カ国である。大部分が中央アジアの国である。

カナダ・オーストラリア・カザフスタンの3大生産国で、ウランの世界生産の略60%を占めている。
以上

2012年2月27日月曜日

台湾の話

正確に書くと『臺灣』である。台湾内部で一般的に使用されている漢字は「台灣」である。日本では「台湾」と書く。
英語ではTaiwanまたはFormosaという。後者はポルトガル語に由来し、「麗しい」の意味である。
何れにしろ『タイワン』の呼称は、原住民の言葉に由来し、漢語や日本語とは無縁の様である。

面積36,000平方キロ(大略九州程度)、人口23百万人程度。
日本と同様に火山が多く、温泉が豊富で、大地震も起こる。中央山地には高山が多く、最高峰は玉山(3997m)で、日本の富士山(3776m)より200m余り高い。3000m以上の山は、133座あり、日本に比べ桁違いに多い。
台湾の旗(国民党)は青天白日旗(右掲)である。

三国時代(220~280)に、中国では「夷州」 の呼称で台湾島が知られていた様である。3世紀末に「魏志倭人伝」で日本の国が知られていたのと同列である。

日本においては、古くは台湾の事を「高砂」とか「高山国」と呼んでいた様である。
室町時代(14~16世紀)には、明国と勘合符による勘合貿易が行われていた。しかし勘合符を持たない密貿易も盛んであり、「南無八幡大菩薩」 の旗を掲げた密貿易船も横行していた。密貿易船は、しばしば海賊にも変身し「八幡船:バハンセン」とか「倭寇」とか呼ばれて恐れられていた。
この頃の高山国には、倭寇や明の海賊 の基地が幾つも作られていたと思われるが、明国が台湾を支配していた形跡は全くない。

16世紀末に日本統一を果たした豊臣秀吉は 、「朝鮮」・「高山国」 ・「呂宋:ルソン:フィリッピン」に『朝貢を促す使者』 を派遣した。 朝鮮とは話がこじれて、二度にわたる「朝鮮派兵」となってしまった。
「高山国」には、原田孫七郎が派遣されたが、倭寇や明海賊の基地は在るものの、使書を渡すべき『国の統一機構』は見つからず、空しく帰朝したようである。(当該使書は、加賀前田家に残されているとの事。)

17世紀になると、1625年台湾近くの「澎湖島」の領有を廻り、明国とオランダの紛争が勃発し、澎湖島は明領とし、台湾島はオランダの領有を認める協定が成立した。 オランダは、台湾に「ゼーランジャ城」と「プロビンシャ城」の要塞を作り、台湾支配を開始した。
この頃の台湾では、日本商人や倭寇の基地が沢山作られており、貿易拠点として使われていた。日本国の関与なしで、明~オランダ間だけの一方的な協定で台湾の帰属が決められたので、その後大きな問題が発生した。

台湾のオランダ支配が一方的に進められ、日本人の台湾基地に貿易税が掛けられる様になってしまったのである。日本人はオランダの貿易課税に強く反発し、遂に浜田弥兵衛はオランダの台湾長官を襲撃する事件を起こしてしまった。  
事件後 浜田弥兵衛は、台湾先住民の代表達を引連れて、徳川三代将軍家光に謁見している。
ところが徳川幕府は厄介な国際問題に困惑し、1639年『鎖国』してしまった。
自国民の権益保護には全く頭が回らず 、重要問題をひたすら回避する腑抜け役人の先例を観る事ができる。  

台湾領有を意図していたのは、オランダだけではない。スペインも1626年台湾北部を領有し、「サン・サルバドル」要塞や 「サン・ドミンゴ」 要塞を作った。オランダ~スペインの確執はあったであろうが、最終的にはオランダがスペインを駆逐し、1642年オランダの台湾全島支配が完成した。
その後植民地の労働力確保のため、対岸の福建省から多数の中国人を台湾に移住させて行った。

明の海賊鄭芝竜(テイシリュウ)が日本の平戸に滞在し、日本人妻「まつ」との間に出来た子が『鄭成功』である。1624年誕生した。1631年鄭芝竜は、妻子を引連れ明に移住し、明朝に仕えた。
1646年明朝は滅亡し、清王朝に代わった。明の官であった鄭芝竜は清に捕縛され、日本人妻「まつ」は 自害して果てた。父母を清に奪われた『鄭成功』は、海賊の首領となり、清王朝に頑強に抵抗を続けた。しかしながら次第に追い詰められ、遂に大陸から逃れて台湾を反抗の拠点にした。
鄭成功は、中国人兵士・家族約3万人を引連れて台湾攻略を開始した。1662年オランダ軍を降伏させ、台湾の支配権を中国側に取り戻した。ところがこの年のうちに鄭成功は他界し、長男鄭経が台湾統治を引き継いだ。
鄭成功は、『国姓爺』とも呼ばれていた様で、近松門左衛門(1653~1725)の人形浄瑠璃 「国姓爺合戦」 は、『鄭成功』の波瀾万丈の生涯をモデルにしたと言われている。
台湾の鄭一族と清王朝の抗争はその後も続いて行くが、1683年鄭一族は遂に清に降伏した。清王朝は1684年台湾領有を宣言した。

大日本帝国の明治政府は、朝鮮半島への権益拡大を狙っていた。李氏朝鮮を属国としていた清王朝と大日本帝国が衝突し1894年日清戦争を始めてしまった。1895年の日清講和条約(伊藤博文-李鴻章)で『朝鮮の独立』・『遼東半島・台湾と澎湖諸島の割与』および賠償金の支払い等を取り決めた。 
これに対し極東への進出を目論むロシア・フランス・ドイツが結託し、日本の遼東半島領有に強硬に反対した。 このため日本は、臥薪嘗胆し「遼東半島領有」を諦めざるを得なかった。
一方ロシアは、遼東半島を租借し旅順要塞を作り、太平洋艦隊の基地として着々と極東進出を進めていった。ドイツは、 遼東半島の対岸山東半島の付根の青島(チンタオ)を租借した。フランスは後に中国南部雷州(レイチョウ)半島北東部の堪江(チャンチアン) を租借した。ロシア・ドイツ・フランスは、結託して日本の進出をくい止めるとともに、清の衰えにつけ込み、やりたい放題をやった様である。

日清戦争で台湾を領有した大日本帝国は、台湾統治に着手したが頑強なゲリラの抵抗に遭い難渋している。台湾北部から上陸し、増援を繰り返していったが全島の制圧までに半年程度を要している。
日本の台湾統治が始まると、特に教育に力を入れ、小・中学校を沢山各地に作り、高校・大学も台湾に設立した。台湾の人々に、日本人としての教育を受けさせたのである。

1941年太平洋戦争が始まると、台湾の人々も約30万人が日本兵や軍属として戦争に送り出された。誠に幸いな事に、台湾は沖縄の様な戦禍に見舞われる事は無かった。 1945年 日本降伏と同時に、中国に返還された。
中国大陸では引続き毛沢東の共産党と蒋介石の国民党の内戦が続いていた。1949年大陸では遂に国民党が大敗し、蒋介石は国民党を率いて台湾に逃れた。『歴史は繰り返す』である。300年ほど前の 『鄭成功』の再現である。

その後しばらくは、国民党独裁の台湾統治が続いた。台湾出身の李登輝氏が国民党の総統になった時、1996年台湾総統を普通選挙で選ぶ民主的仕組みに大改革された。初代の公選総統は李登輝総統である。2000年の総統選挙では、民主進歩党の陳水扁氏が当選した。陳水扁総統が2期続いた後、2008年国民党の馬英九氏が総統に当選した。

台湾の話で不可欠の話題は、紫禁城の秘宝である。北京の紫禁城天安門と南方に広がる天安門広場は有名でよく知られている。紫禁城は中華人民共和国政府により維持管理され、観光客の入場見学ができる。流石に立派なものである。しかし清王朝が保有していた多数の秘宝は、紫禁城には殆ど残っていない。
1937年北京郊外「盧溝橋」事件をきっかけに大日本帝国が中国侵略を開始すると、中国人たちは紫禁城の多数の秘宝を、戦禍を避けるべく多数に分散して隠蔽した。その後大陸の内戦で敗退した国民党軍は、隠蔽していた多数の秘宝を引っ提げて台湾に転進した。
台湾に持ち込まれた多数の紫禁城の秘宝は、現在台北市の『故宮博物院』(クーコン・ポーウー・ユェン)に展示されており、誰でも見学できる。
以上

2012年2月24日金曜日

ホルムズ海峡

ペルシャ湾は、アラビア半島とイランとの間に横たわる長大な湾である。ペルシャ湾は、ホルムズ海峡を経由してインド洋のオマーン湾に通じている。ホルムズ海峡はイラン~オマーン間を隔てる幅30km程度の狭い海峡である。
イラン国旗・オマーン国旗を右に示す。

ペルシャ湾の湾岸諸国は、イラン・イラク・クウェート・サウジアラビア・アラブ首長国連邦であり、何れも豊富な産油量を持つ国々である。従ってホルムズ海峡は、湾岸諸国からの原油を運ぶタンカー船団の唯一の通り道となっている要衝である。

米国は、イランの核技術開発に多大の懸念を抱いており、石油代金の決済を禁ずる「金融制裁」を加えるとともに、様々な恫喝を試みている。

米国は、米海軍第五艦隊原子力空母「エイブラハム・リンカーン」を、2012/1/22急遽ホルムズ海峡を通過させ、ペルシャ湾内に配備した。
オバマ米大統領は、イランに核兵器開発の兆候有りと主張して、「イラン制裁に如何なる手段も排除せず」とイランに対し凄まじい恫喝を行っている。

イランは日本とは真逆で、米国には敢えて「NO」と言い張る根性の持ち主である。1980/9/22~1988/8/20のイラン~イラク戦争で、世界中を敵に回しながら戦い抜き、勝利を得たイランである。イスラム革命の波及を恐れ、世界中が反イランであった。
イラン~イラク戦争は、米国から多大の武器援助を受けていたイラクのサダム・フセイン大統領が仕掛けた戦争である。
オバマ米大統領の様々な恫喝も、イラン最高指導者アフマディネジャド大統領には、大した効果も期待できないと思われる。しかし今回だけは湾岸諸国や石油輸入国を巻き込む大問題であり、イランも極めて沈着冷静に穏便に対処しているようである。従ってホルムズ海峡が封鎖される様な事態は、起こらないと思う。

「経済制裁」は、その対象国との間に「戦争が起こるリスク」を伴う『危険極まりない』政治判断である。私は日本国が如何なる経済制裁に加担する事にも反対します。
イランの穏便な対処により、ホルムズ海峡封鎖は無いと思いますが、万一の場合の対策は考慮しておく必要があります。その場合原発の稼働にも期待しますが、備蓄石油の放出も必要です。石油の備蓄は独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」で行はれており、民間備蓄・国家備蓄合わせて半年分程度です。情勢を見ながら、この半年程度の間に、官民挙げて原油の新しい買い付け先探すことになるのでしょう。

『「イランは悪の枢軸」などと言う、米国の極めて得手勝手な世界観』は大間違いです。イランの言い分の方が、余程筋道が通っています。
イランは核不拡散条約(NPT)に加盟しており、国際原子力機関(IAEA)の監査を受けています。NPTを脱退し、IAEAを国外に叩き出した「北朝鮮」とは大違いです。
イランはウラン濃縮工場を建設し、現に濃縮ウランを製造していますが、原子力発電用燃料の製造用だと言っています。間違いなくロシア国営企業ロスアトムの協力を得て、イラン南部のブセールに原子力発電所を建設しております。

しかし「イランがいつまでも核兵器を持たない」という保証は全くありません。
イランの東隣国パキスタンは核兵器を持っており、西隣国イラクは国連査察団を何度も受け入れ、「大量破壊兵器」を持たない事を確認してから、『多国籍軍』という摩訶不思議な呼称の『枢軸国軍』に蹂躙され、未だに平和が訪れていません。この現実を見れば、「イランの核武装は将来有り得る」と考えるのが当然である。だからこそ米国は苛立っており、米国に対して敢えて「NO」と言うイランを不気味に感じているのである。

我々はホルムズ海峡情勢を気にしながら、危機意識を持って日本政府の動き方を注視し続けなければならない。東日本大震災の復興は勿論大切ですが、ホルムズ海峡の万一の封鎖の際は、迅速な行動が必要である。石油備蓄の半年間が勝負である。

2012年2月6日月曜日

平壌宣言

2011/12/17北朝鮮の金正日が他界し、三男の金正恩が後継者となった。
北朝鮮の正式名称は、「朝鮮民主主義人民共和国」である。英文表記では、「Democratic People's Republic of Korea」である。
総人口2300万人程度。首都は平壌(ピョンヤン)である。

北朝鮮の国情は、どう考えても、額面通りには受け取れないと思う人が殆どであろう。
金王朝だと見る向きもある。金日成(キムイルソン1912/4/15~1994/7/8)・金正日(キムジョンイル1941/2/16~2011/12/17)・金正恩(キムジョンウン1983/1/8~)と確かに金王朝は3代続いている。但しこれは表看板だけの話である。実態は紛うことなく『軍事政権国家』である。自ら先軍政治を呼称している。『軍人のための、軍人による、軍人の国家』である。軍人国家とはいうものの、戦闘機や戦車は、旧式の上に燃料不足で、満足な運用は出来そうにもないと推測される。まともに使えるのは核兵器とミサイルだけである。

国連加盟は韓国と同時期で、1991年で非常に遅い。国連に加盟していながら、国連軍と対峙中(休戦中)である。

北朝鮮の核開発は、「核拡散防止条約:NPT」に加盟する条件で、1960年代から始まった。核の軍事利用目的の疑惑が持たれ始め、IAEAの監視が厳しくなると、1993/3/12「核拡散防止条約」から脱退した。

2006/10/9と2009/5/25に地下核実験を行っており、現在プルトニウム原爆を数発保有していると思われる。ミサイルは、スカッドミサイルとノドンを保有しており、射程6000km以上の中距離弾道ミサイルのテポドン(大浦洞)も開発している。
スカッドは射程700km以下。ノドンの射程は1000~1300kmで、日本の略全域がノドンの射程内にある。「慣性誘導方式」の照準であるから、命中精度は左程でもない。いずれも液体燃料(ヒドラジン系)ではあるが、常温貯蔵のため燃料注入には手間取らない。スカッド・ノドン共に中東等に輸出している。2006/7/5北朝鮮は、スカッド・ノドン・テポドン2号の弾道ミサイル計7発を日本海北部に向け試験発射している。

テポドン2号は、本格的な大陸間弾道弾(ICBM)である。2009/4/5テポドン2号が発射され、1段目は日本海に落下、2段目以降は日本の東北地方の上空(大気圏外)を通過し、太平洋に落下した。北朝鮮は、『人工衛星「光明星2号」の打ち上げに成功した』と発表したが、アメリカ・ロシア共に周回軌道上に「光明星2号」は存在しない事を確認している。日本も観測データから、衛星軌道速度に達していないと推定していた。


さて本論の「平壌宣言」の話である。
小泉純一郎元首相は、極め付きの個性的・独断的性格ではあったが、機を看るに敏で、実行力の旺盛な総理であった。彼の最大の功績は「郵便公社民営化」と「平壌宣言」であったと思う。逆に最悪で滅茶苦茶な横車を押し通したのは、自衛隊の『イラク派兵』であった。

平壌宣言は2002/9/17日本国総理大臣小泉純一郎と朝鮮民主主義人民共和国国防委員長金正日が平壌で会談し宣言したものである。
過去を清算し、懸案事項の解決を図り、政治・経済・文化的関係を樹立する事が、相互の利益になり、地域の平和と安定に寄与すると確認した。

要点だけを箇条書きする。

  1. 2002年10月中に国交正常化交渉を再開する。諸問題に誠意を持って当たる。
  2. 日本国は植民地支配の歴史事実を認め、反省と陳謝を表明した。
    1945/8/15(大日本帝国の敗戦日)以前の財産と請求権を相互に放棄した。
  3. 国際法を守り、安全を脅かす行為をしない事を確認。
    『拉致問題』は、不正常関係の時生じた遺憾な問題。再発しない事を確認。
  4. 北東アジアの関係国間で、協力関係の枠組み整備が重要であると相互に認識した。
    核・ミサイル等の問題は、関係国間の対話で解決を図る。
    朝鮮民主主義人民共和国は、ミサイル発射モラトリアムを2003年以降も継続する。
平壌宣言で、金正日に『拉致問題』を認めさせたのは、小泉外交の大成果であった。北朝鮮の核疑惑の進展状況から見ても、絶妙なタイミングの首脳会談であった。
問題はこの後の外交処理であった。2005年頃から潮目が変わり、北朝鮮との外交関係が急激に悪化していったのは誠に残念至極であった。過半の責任は日本側に有ったと、私は思っている。

2002/10/5地村夫妻・蓮池夫妻・曽我さんの5名が、日本に「一時帰国」し家族と再会した。同年10/24日本国政府は「一時帰国」を「永住」とし、帰国者の家族の『安全確保と帰国日程の確定』を一方的に要求した。
2004/5/22第2回日朝首脳会議が行われ、地村・蓮池両家の家族5名が帰国。曽我家家族3名の帰国は、7/18となった。

その後2004年には、「日朝実務者協議」が数度行われ、その他の拉致被害者の消息調査と関連する議論が行われた。
実務者協議では真剣な議論が戦わされたが、2005/1/26北朝鮮側が「備忘録」を発表し、同年2/10、日本側が「備忘録に対する反論」を発表した。

これはもう、国同士の殴り合いの喧嘩沙汰である。横田めぐみさんの遺骨とされる骨片を廻る論争である。日本のDNA鑑定技術の高さは、北朝鮮側に相当以上のボディーブローとなった様である。
日本側の実務者に『時の氏神』という言葉を知る人はいなかったのだろうか。誠に残念なことである。要するに、『叩きのめして、追い返せば済む話』であったのかと言いたいのである。
実務者は双方とも忠実・真面目で議論がエスカレートすれば、事実上の喧嘩沙汰位は起こるであろう。北朝鮮側の言い分の大筋は、私には良く理解できる。平壌宣言に従って、生存拉致被害者は全員帰国させた。『これ以上無い袖は振れぬ。国交正常化の話はどうなっているのだ。』と言っているのである。

平壌宣言の最大の目的は、国交正常化である。『誠意を持って当たる』と誓っていながら、実務者協議で喧嘩沙汰である。ここはもう政治・外交の出番であった。返す返すも残念であった。
2005年頃から、北朝鮮は日本側の誠意に疑問を感じ始めたに違いない。潮目が変わったのである。

北朝鮮の万景峰(バンギョンボン)号という船が有る。江原道元山(ウオンサン)と新潟の間に就航していた船である。2006/7/5のミサイル試射により、日本政府は万景峰号の半年間入港禁止を行った。更に2006/10/9の北朝鮮の地下核実験により、2006/10/14日本政府は北朝鮮の全船舶の入港禁止を行った。これらの処置は、日本~北朝鮮間の一切の交易を禁止する『経済制裁』の発動である。
太平洋戦争は、米国の対日経済制裁が直接の起因である。『経済制裁』は『対象国との戦争のリスク』を伴う、極めて危険な政治判断である。私は日本国がどんな経済制裁に加わることにも大反対である。

イランに対するアメリカの『金融制裁』により、ホルムス海峡で風雲急となった。アメリカ軍原子力空母エイブラハム・リンカーンとイラン軍の睨みあいである。

北朝鮮に対する日本の経済制裁は、今も続いている。日本国は北朝鮮の敵性国家と看做され、ノドンミサイルの標的とされているのである。誠に残念である。
以上