2012年4月5日木曜日

世界の燃料消費

米国のオバマ大統領は、イランの核開発に大きな不安を抱いており、イランに対し金融制裁を課している。確かに、イランの核開発は目覚ましく進展している。複数箇所にウラン濃縮工場を建設し、現に濃縮ウランの製造を行っている。当面はイラン南部のBushehrにある原子力発電所用の燃料製造に使用する目的である。

イランは核拡散防止条約(NPT)に加盟しており、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れている。1993年NPTを脱退しIAEAを国外に叩き出した北朝鮮とは大違いである。
(右図はIAEAの旗である。)

イランは、NPTの条約に基づきIAEAの監査を受けながら核開発を行っている。米国から非難される理由がない。
米国オバマ大統領のイランに対する金融制裁の仕打ちは、国際的正義にもとる。米国の「対中東政策」は、イスラム~イスラエルの対立の図式を前提に行われている。イランの核開発は、当然ながらイスラエルにとって我慢のならない大きな脅威なのである。イスラエルは、核兵器保有について『一切のコメントを拒否』している。しかし一般的には「核兵器保有国」と看做されている。もちろんNPTには、最初から加盟していない。

ところが、将来イランが核兵器保有国となった場合、イスラエルの核兵器保有はほとんど無意味になってしまうのである。万一イランから核ミサイルを撃ち込まれると、小さい国土のイスラエルは、核ミサイル1発で壊滅してしまう。一方、広大な国土のイランは、イスラエルから数発の核ミサイルを撃ち込まれても、国が壊滅する事態にまでは至らない。

建国以来、イスラエルは、近隣諸国の核開発に極めて過激に反応していた。1981年サウジアラビヤ経由の飛行ルートで、イラク中部のOsirakにあるイラクの原子炉を爆撃し全壊させている。
しかしながら、イスラエルとイランは1000km以上も離れており、イスラエルが歯ぎしりして悔しがっても、イラク上空での空中給油なしに、イランのウラン濃縮工場を爆撃する事は不可能である。1000km以上の距離は、もはやミサイル攻撃の範囲である。北朝鮮はノドン・ミサイルを中東に輸出しており、射程は1000~1300kmである。イラン東部から発射すれば、イスラエルはノドンの射程内である。

米国にとって、イランの核開発は極めて気懸りであり、強引な金融制裁でイラン締め付けに躍起になっている。日本とドイツは、米国から有難いお目こぼしを頂戴したようである。イランからの石油輸入を減らしているのを評価し『今後もイランから石油を買っていい』との米国のご託宣を得たのである。
私は、「今頃何を言っているのか」といささか驚いた。日本は最近特別に石油輸入を減らしたわけではない。長期間にわたり減らし続けたのだ。過去10年間で日本は30%石油消費を減らしており、ドイツは12%低減させている。

前置きが大変長くなった。本論に戻る。
あらためて、世界の燃料消費について調べてみた。BP社の「Statistical Review of Energy 2010」を眺めていると、様々な事情が見えてきます。以下の議論は、同社のデータを利用した。

①石油消費

世界の5大消費国は、米・中・日・印・露で、トップ5で全世界の石油消費の44~45%を占めている。米国だけで22~24%、中国10%、日本5~6%である。ドイツ7位、イタリア13位、イギリス14位・・・と続くが、フランスはランキングに出てこない。原子力発電が多いためと推測する。
2000~2009の10年間で、米国(25→22%)・日本(7→5%)は漸減、中国(6→10)は急増している。
世界の石油消費は、3600→3900(百万トン)に増加しているので、日本の石油消費の落ち込み(255.5→197.6:百万トン)はかなり大きい

②天然ガス消費

世界の5大消費国は、米・露・イラン・カナダ・中である。トップ5で全世界の45%を占め、米国は22%である。日本6位(3%)、イギリス・ドイツ・サウジアラビア・イタリアと続くが、フランスはやはりランキングに出てこない。これも原子力発電によると考える。
消費の急増は、イラン(2倍/10年)・中国(3.6倍/10年)である。それ以外は「%表示では」略安定している。
日本は3%で安定しているようであるが、世界の消費量が2400→2900億立方メートルに増大しているので、日本の消費も相応(723→874億立方メートル)に増大している。
日本は、石油から天然ガスに少しづつ切り替わっているようである。

③石炭消費

世界の5大消費国は、中・米・印・日・南アフリカである。石炭消費は、燃料用だけでなく、製鉄用にも使われるので、注意が必要である。
中国は10年間で29→47%に消費量を増大させており、目覚ましい経済発展を遂げた。米国は24→15%に減少した。インド(6~7%)・日本(3~4%)は安定している。世界の消費量が2246.7→3408.6(百万トン)と1.4倍に増大しているが、日本は98.9→108.8(百万トン)と微増である。

③ウラン生産量

ウランの消費量は、殆ど統計がない。やむを得ず生産量を調べたが、BP社の「Statistical Review of Energy 2010」には記載なし。
フランスのAREVA社(世界最大の原子力産業複合企業)が国際原子力機関(IAEA)の会議で報告している資料を見つけたので、これを利用した。「2002~2008年の7年間の年別ウラン生産量」である。
総生産量は35→45ktonに漸増している。カナダ10kton・オーストラリア7~8kton程度で安定している。カザフスタン(3→10kton)の伸びが大きい。ニジェール等アフリカ諸国の産出量も10kton程度で、漸増である。「other CIS」は8kton程度で安定している。『other CIS』とは、カザフスタン以外の『独立国家共同体』の意味である。『独立国家共同体』とは、ロシア・カザフスタン・タジキスタン・ウズベキスタン・キルギス・ベラルーシ・アルメニア・アゼルバイジャンの8カ国である。大部分が中央アジアの国である。

カナダ・オーストラリア・カザフスタンの3大生産国で、ウランの世界生産の略60%を占めている。
以上

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