総人口の推移予想で極めて重要な統計資料は、「死亡率」と「出生率」である。「死亡率」とは年齢毎の1年間の「死亡者数/(死亡者+数生存者数)」の比率である。通常「10万人中1年間で死亡する人数」で表す。
右の図は、2010年の「死亡率」である。厚生労働省大臣官房統計情報部動態・保健統計課のデータから作成した。縦軸が死亡率、横軸が年齢である。70歳位から、加速度的に急上昇する。
40歳までの「死亡率」を、次の図に示す。男女とも8~9歳「死亡率」最低で、10万人中9人程度の「死亡率」である。
8~9歳を過ぎると「死亡率」に『顕著な男女差』が出てくる。男性は女性の倍近い「死亡率」になってしまう。
● 『平均余命』
死亡率に関連するもう一つの統計項目として、『平均余命』がある。
日本人の当人の年齢から、あと何年生きられるだろうかを知る目安となる。日本人の『平均寿命』は、日本人の「0歳児」の平均余命である。
平均余命も平均寿命も『現在の生存者の半数が死亡するまでの期間』である。単純に言えば、生存者の半減期である。
ともがらの半数が他界するのだから、老人にとっては辛い言葉であろう。
右の図は、厚生労働省の平成21年「簡易生命表」から作成した『日本人の平均余命グラフ』である。平成21年(2009年)のデータである。
縦軸が『平均余命』、横軸が『年齢』である。20歳の男性の「平均余命」は60年であるから、60年後(80歳になるまでに)半分の人が他界する。70歳の女性の「平均余命」は20年であるから、20年後(90歳になるまでに)半数の人が他界する。
● 『出生率』
「出生率」についても、年齢別に『一人当たり1年間に、平均何人の子供を産むか』の統計がある。
右の図は、2009年のデータにより作成した。
またこれらのデータにより、『合計特殊出生率』が算出される。
● 『合計特殊出生率』
これは『一人の女性が、一生涯に産む子供の数の平均値』である。『合計特殊出生率』が2.08を下回ると、その国の人口は次第に減少してゆく。
各国の『合計特殊出生率』を以下に記載する。
2011年頃のデータである。
- 韓国 1.24
- 日本 1.39
- イタリア 1.41
- アメリカ 1.93
- スウェーデン 1.94
- イギリス 1.96
- フランス 2.00
現在の大和撫子達は、晩婚傾向が進み、一生涯に平均1.39人の子供しか作らない。従って当面は、日本の人口減少が進むことになる。
● 『日本の人口推移』
総務省統計局は、2010年以降の日本の総人口の推移を推定計算している。そのデータをもとに、グラフにしたものが右図である。
2010年の人口が1億2,800万人。今世紀末の2100年の人口は、4,800万人程度である。現在の38%程度の人口になると予想している。
私は、これで良いのだと信じている。
① 国内総生産
真面目で勤勉で利口な日本国民は、人口減少の割合に比べて、国内総生産の落ち込
みは相当以上に緩やかな減少に食い止めると思う。
② 食料自給率
農水省は、「カロリーベース総合食料自給率」と「生産額ベース総合食料自給率」の2種類の統計項目を作っている。
● カロリーベース総合食料自給率 39% 2010年
● 生産額ベース総合食料自給率 69% 2010年
農水省は、「カロリーベース」を50%以上にするのが悲願の様である。私は貿易立国日本の立場から、『「生産額ベース」69%の現状で既に十分である』と信じている。
今後人口減少が続けば、例え農水省が無為無策でいても、「カロリーベース」50%以上は、いずれ達成されるであろう。
③ 遺産相続
先人たちが残した様々の膨大な遺産は、数少ない子孫たちが受け継ぐ。一人あたりの遺産額は相当大きなものになって行く。裕福な子孫たちよ。
④ エネルギー資源
自然エネルギー利用が進み、人口減少に伴って、国内の原子力発電は不用になる。
自然エネルギー利用の進展と人口減少、メタンハイドレート採掘利用等で、燃料輸入量が大幅に減少する。国内CO2発生量は低下してゆく。
⑤ 待機児童の減少
当面は、保育所不足が問題の様であるが、いずれ間違いなく解消されてゆく。
物事には全て、「良い面」と「克服すべき問題点」がある。
「非難」や「反対」は楽である。「克服すべき問題点」だけを声高に主張すればよい。
しかし物事を推し進めるためには、、「良い面」と「克服すべき問題点」の両方に良い解答を出さなければならない。
人口減少の大きな問題点は下記である。
① 赤字国債の処理
現在の赤字国債の累積額は1,000兆円を超えている。しかも毎年の赤字国債の発行高は50兆円程度である。2075年には日本の人口は7,000万人以下になる。
この時の国債累積残高は4,000兆円程度になってしまう。国民一人当たり6,000万円程度の政府の借金を背負うことになる。
現在でも国債残高は、GDPの2年分程度であり、「国債残高」/「国内総生産」の比率は、先進国ではワースト1である。
破滅の道を抜け出るためには、『税制の抜本改革』か『インフレ』以外に打つ手は無さそうである。
② 小さな政府・小さな議会の実現
これから人口は顕著に減少してゆくのだから、人口減に見合う議員数・官僚人数の削減が必須・喫緊の課題である。しかし一度膨らんだものを小さくする事には、強力で根強い反発があり大変な労力を払わなければ成就できない。
③大学の整理統合
人口減少により、受験生の数は年毎に減少し、優秀な学生を集めるのが困難になる。
大学の統合整理と、海外留学生の受け入れ拡大が将来の課題となるだろう。
以上
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