2012年2月6日月曜日

平壌宣言

2011/12/17北朝鮮の金正日が他界し、三男の金正恩が後継者となった。
北朝鮮の正式名称は、「朝鮮民主主義人民共和国」である。英文表記では、「Democratic People's Republic of Korea」である。
総人口2300万人程度。首都は平壌(ピョンヤン)である。

北朝鮮の国情は、どう考えても、額面通りには受け取れないと思う人が殆どであろう。
金王朝だと見る向きもある。金日成(キムイルソン1912/4/15~1994/7/8)・金正日(キムジョンイル1941/2/16~2011/12/17)・金正恩(キムジョンウン1983/1/8~)と確かに金王朝は3代続いている。但しこれは表看板だけの話である。実態は紛うことなく『軍事政権国家』である。自ら先軍政治を呼称している。『軍人のための、軍人による、軍人の国家』である。軍人国家とはいうものの、戦闘機や戦車は、旧式の上に燃料不足で、満足な運用は出来そうにもないと推測される。まともに使えるのは核兵器とミサイルだけである。

国連加盟は韓国と同時期で、1991年で非常に遅い。国連に加盟していながら、国連軍と対峙中(休戦中)である。

北朝鮮の核開発は、「核拡散防止条約:NPT」に加盟する条件で、1960年代から始まった。核の軍事利用目的の疑惑が持たれ始め、IAEAの監視が厳しくなると、1993/3/12「核拡散防止条約」から脱退した。

2006/10/9と2009/5/25に地下核実験を行っており、現在プルトニウム原爆を数発保有していると思われる。ミサイルは、スカッドミサイルとノドンを保有しており、射程6000km以上の中距離弾道ミサイルのテポドン(大浦洞)も開発している。
スカッドは射程700km以下。ノドンの射程は1000~1300kmで、日本の略全域がノドンの射程内にある。「慣性誘導方式」の照準であるから、命中精度は左程でもない。いずれも液体燃料(ヒドラジン系)ではあるが、常温貯蔵のため燃料注入には手間取らない。スカッド・ノドン共に中東等に輸出している。2006/7/5北朝鮮は、スカッド・ノドン・テポドン2号の弾道ミサイル計7発を日本海北部に向け試験発射している。

テポドン2号は、本格的な大陸間弾道弾(ICBM)である。2009/4/5テポドン2号が発射され、1段目は日本海に落下、2段目以降は日本の東北地方の上空(大気圏外)を通過し、太平洋に落下した。北朝鮮は、『人工衛星「光明星2号」の打ち上げに成功した』と発表したが、アメリカ・ロシア共に周回軌道上に「光明星2号」は存在しない事を確認している。日本も観測データから、衛星軌道速度に達していないと推定していた。


さて本論の「平壌宣言」の話である。
小泉純一郎元首相は、極め付きの個性的・独断的性格ではあったが、機を看るに敏で、実行力の旺盛な総理であった。彼の最大の功績は「郵便公社民営化」と「平壌宣言」であったと思う。逆に最悪で滅茶苦茶な横車を押し通したのは、自衛隊の『イラク派兵』であった。

平壌宣言は2002/9/17日本国総理大臣小泉純一郎と朝鮮民主主義人民共和国国防委員長金正日が平壌で会談し宣言したものである。
過去を清算し、懸案事項の解決を図り、政治・経済・文化的関係を樹立する事が、相互の利益になり、地域の平和と安定に寄与すると確認した。

要点だけを箇条書きする。

  1. 2002年10月中に国交正常化交渉を再開する。諸問題に誠意を持って当たる。
  2. 日本国は植民地支配の歴史事実を認め、反省と陳謝を表明した。
    1945/8/15(大日本帝国の敗戦日)以前の財産と請求権を相互に放棄した。
  3. 国際法を守り、安全を脅かす行為をしない事を確認。
    『拉致問題』は、不正常関係の時生じた遺憾な問題。再発しない事を確認。
  4. 北東アジアの関係国間で、協力関係の枠組み整備が重要であると相互に認識した。
    核・ミサイル等の問題は、関係国間の対話で解決を図る。
    朝鮮民主主義人民共和国は、ミサイル発射モラトリアムを2003年以降も継続する。
平壌宣言で、金正日に『拉致問題』を認めさせたのは、小泉外交の大成果であった。北朝鮮の核疑惑の進展状況から見ても、絶妙なタイミングの首脳会談であった。
問題はこの後の外交処理であった。2005年頃から潮目が変わり、北朝鮮との外交関係が急激に悪化していったのは誠に残念至極であった。過半の責任は日本側に有ったと、私は思っている。

2002/10/5地村夫妻・蓮池夫妻・曽我さんの5名が、日本に「一時帰国」し家族と再会した。同年10/24日本国政府は「一時帰国」を「永住」とし、帰国者の家族の『安全確保と帰国日程の確定』を一方的に要求した。
2004/5/22第2回日朝首脳会議が行われ、地村・蓮池両家の家族5名が帰国。曽我家家族3名の帰国は、7/18となった。

その後2004年には、「日朝実務者協議」が数度行われ、その他の拉致被害者の消息調査と関連する議論が行われた。
実務者協議では真剣な議論が戦わされたが、2005/1/26北朝鮮側が「備忘録」を発表し、同年2/10、日本側が「備忘録に対する反論」を発表した。

これはもう、国同士の殴り合いの喧嘩沙汰である。横田めぐみさんの遺骨とされる骨片を廻る論争である。日本のDNA鑑定技術の高さは、北朝鮮側に相当以上のボディーブローとなった様である。
日本側の実務者に『時の氏神』という言葉を知る人はいなかったのだろうか。誠に残念なことである。要するに、『叩きのめして、追い返せば済む話』であったのかと言いたいのである。
実務者は双方とも忠実・真面目で議論がエスカレートすれば、事実上の喧嘩沙汰位は起こるであろう。北朝鮮側の言い分の大筋は、私には良く理解できる。平壌宣言に従って、生存拉致被害者は全員帰国させた。『これ以上無い袖は振れぬ。国交正常化の話はどうなっているのだ。』と言っているのである。

平壌宣言の最大の目的は、国交正常化である。『誠意を持って当たる』と誓っていながら、実務者協議で喧嘩沙汰である。ここはもう政治・外交の出番であった。返す返すも残念であった。
2005年頃から、北朝鮮は日本側の誠意に疑問を感じ始めたに違いない。潮目が変わったのである。

北朝鮮の万景峰(バンギョンボン)号という船が有る。江原道元山(ウオンサン)と新潟の間に就航していた船である。2006/7/5のミサイル試射により、日本政府は万景峰号の半年間入港禁止を行った。更に2006/10/9の北朝鮮の地下核実験により、2006/10/14日本政府は北朝鮮の全船舶の入港禁止を行った。これらの処置は、日本~北朝鮮間の一切の交易を禁止する『経済制裁』の発動である。
太平洋戦争は、米国の対日経済制裁が直接の起因である。『経済制裁』は『対象国との戦争のリスク』を伴う、極めて危険な政治判断である。私は日本国がどんな経済制裁に加わることにも大反対である。

イランに対するアメリカの『金融制裁』により、ホルムス海峡で風雲急となった。アメリカ軍原子力空母エイブラハム・リンカーンとイラン軍の睨みあいである。

北朝鮮に対する日本の経済制裁は、今も続いている。日本国は北朝鮮の敵性国家と看做され、ノドンミサイルの標的とされているのである。誠に残念である。
以上

2011年12月13日火曜日

政治家の品格

日本国憲法が公布されたのは、昭和21年11月3日(日曜|大安:1946年)です。
公布後に誕生した片山内閣以降、現在の野田内閣まで50代(31人)の内閣が誕生しました。これ等の内閣の平均期間は、1年4か月程度で、非常に短いのです。こんな事で腰を据えた政策の実現が本当に可能だったのか、私は大変な危惧の念を抱いています。

現在の政治家には、首相の退陣を求めるだけで、政局作りが最大の関心事と心得る御仁が結構沢山います。これらの御仁の妄動により、内閣支持率の動向を横目に眺めて、首相の椅子のたらい回しが行われるようになりました。平均的にみれば、首相の座は一年余でたらい回しされています。こんな為体(ていたらく)では、日本の将来は誠に暗澹たるものとなってしまいます。

日本では、市・町・村の首長は住民の直接投票で選出され、任期は4年です。都道府県知事も直接選挙で選ばれ、任期は4年です。
ところが、日本国の首相は、国会議員の投票で決定され、任期が定まっている訳ではありません。但し首相は衆議院議員ですから、任期は最大でも4年です。

政治とは、国家百年の大計を案じ、今何をなすべきかを決め、国民の歩む方向を示す事が本道です。3/11の東日本大震災を受け、被災者の救済と復興は急務です。更にこれに加えて、国家百年の大計のために、今なすべき事を決めなくてはなりません。
これからは、政局作りに奔走する政治家よりも、政治の本道を歩む政治家を育てる事が大切です。

昔はともかく現代では、首相は国民の直接選挙で選ぶのが、最も相応しいと私は信じています。日本国政府の首長は、日本国民の直接選挙で選ぶというのが、首長の選び方の首尾が一貫していて明快でしょう。首相の任期は4年であり、腰を据えた政策が行えます。しかし、このためには憲法の改定が必要であり、実現は容易ではありません。

憲法第9条の『戦争放棄』は、言葉遊びの拡大解釈で、防衛省と自衛隊を作ることが出来ました。
自衛隊は「軍」ではなく「隊」である。「戦力」ではなく、「自衛力」である。『交戦』ではなく、『有事』である。

首相の国民直接投票制度は、こんな言葉遊びだけでは実現不可能です。本気を出して憲法改定を進めなければなりません。
政治家の品位を保つために、まじめに憲法の改定運動を始めましょう。

2011年10月5日水曜日

彼岸花

9月中旬から10月中旬までが、彼岸花の見頃である。散歩道のいたるところで見かける事ができる。彼岸花は実に妖艶な奇怪な花である。20から40cm程の細い花茎の先端から、細い赤い花弁が放射状に広がった大きな花が、可憐に咲く。花茎には葉っぱもなく、枝分れもない。匂いすらなく、唯ひたすら花だけが咲いている。全くユニークな花である。
花が消えうせると、韮(にら)の様な葉っぱが出てきて、冬の間は緑の葉っぱのままである。春には葉が枯れて、地上には彼岸花の痕跡はなくなる。草木の繁茂する春夏は寝て暮らすという、奇妙な習性を持った植物である。
彼岸花の別名は『曼珠沙華:まんじゅしゃげ』である。「まんず咲け」と理解するのが良いと思う。「先ず花が咲き」花がなくなれば「韮の様な葉が出てきて、春には枯れる」のである。これで彼岸花の1年は終わるのである。
彼岸花の染色体は、3倍体である。従って彼岸花は、毎年妖艶な姿を見せてくれるが、稔らないのである。彼岸花は、球根の分球でしか増殖する術がない。
実のならない花を毎年咲かせるのには、訳がある。彼らの人間に対する狡猾な深慮遠謀を考えるべきである。
我ら日本人は、2千年このかた彼岸花の妖艶・可憐な色に惑わされ、身近に移植し続けてきた。原産地は中国大陸と思われるが、日本中に広まってしまった。彼らの深慮遠謀に、日本人はまんまと乗ってしまったからに他ならない。
ヒガンバナ科ヒガンバナ属 学名 Lycoris radiate は、なかなかやってくれるではないか。球根は、アルカロイドを多く含み、有毒である。食用にはならない。

2011年2月8日火曜日

旧友の論説

大学同期の新年会は誠に楽しいものであった。同郷の旧友が痛快な論説を展開してくれたので、ぜひ紹介しておきたい。読者に自信を持って日本の将来を考えてほしいし、彼の沸々とした愛国心を感じてほしい。
私の「異論な話」は「another theory」位に考えていたが、旧友の論説は「an unique opinion」であると彼が主張しているので、その「ユニーク・オピニオン」を出来るだけ忠実に下記に記載する。

              記

今、日本人に一番必要なのは「元気を出すこと・将来に対する希望を持つ事」であるにも拘わらず、政府、新聞・テレビは「中国・韓国は凄い、日本は駄目」の大合唱である。Web等の知識で反対の理由を捏ねてみる。

彼らの言う日本が駄目な理由と、拙論。

①円高
 「日本は輸出立国、円高は致命的」は嘘。
円高と共に日本は発展してきた。円高は産業・技術の高度化を促し日本を救う。日本の輸出の割合はGDP(国内総生産)の僅か15%であり、内需の方が大切。「日本製品は高級品」のイメージで行くべきだ。
中国・韓国と張り合うことによる技術力の低下、国内産業の空洞化の方が問題である。

(雲行注記:中国・韓国と価格で張り合う事はない。人件費単価の低減や政府補助金の援助でしのぐ考えは愚の骨頂。技術力の格差で競うべし。円高は技術力競争で勝利し獲得した金メダルである。)

②財政赤字
 「日本の借金は、国民総生産の2倍を超している。大変だ。」も嘘。
正しくは日本政府の借金である。日本政府は外国に借金している訳ではない。日本は、年間の貿易黒字(10兆円余り)より海外投資の利子収入(15兆円前後)の方が多い程、外国に金を貸している。

(雲行注記:我々国民の預貯金・投資信託が、銀行や信託会社等を通じて日本政府の債務を支え、更に貿易収支の1.5倍の金利収入を海外から得ている。日本国民が、いかに巨額な資産を保有しているかの証である。)

③少子化
 「若者の社会負担増大」が強調されている。遺産の貰い分も増えるのではないか。
日本の適正人口はせいぜい5千万人程度。長い目で見れば少子化大いに結構。

(雲行注記:日本の人口予測シミュレーション計算を行ってみた。予測計算では、2010年~2100年までの間に、年間百万人づつの略直線的人口減が続く。現状の「女性の年齢別出産率」では、日本の総人口が五千万人程度になるのは2090年頃である。



少子化問題での重要課題は、直線的な人口減少に見合った小さな政府・小さな議会に改変してゆく事である。
人口五千万人なら、農水省が何をしなくとも食料自給率の目標50%は自然にクリアーされる。)

④失われた20年
 「バブル以降20年日本だけ進歩なく取り残されている。日本は駄目だ」。
バブル以降20年間「寝ていても」世界第2位の座を維持したことになる。駄目どころかむしろ立派だ。

(雲行注記:「寝ていても」は、マスコミの自虐嗜好に対する皮肉。エコロジー・アニメ・IT・等々頑張った。その他の分野も頑張った。自動車、製鉄、鉄道技術、工作機械や原子力は優等生だ。)

⑤デフレ
 「日本だけがデフレ、大変だ」。
今後世界は持続可能な地球のため、高能率・低消費社会に向かわざるを得ない。日本は高能率低消費社会化の先頭を走っている事は間違いない。その結果のデフレだ。
「日本だけがデフレだ。素晴らしい。」と相成る。

(雲行注記:年金暮らしの我ら末期高齢者{公式呼称:高貴?後期?高齢者}にはデフレは誠に有難い。)

日本の行く末を懸念して屁理屈を捏ねてきたが、屁理屈が正当な理屈に思えてきた。今まで世界は「大量生産・大量消費国」を先進国と見てきたが、今後は「高能率・低消費」が先進国の指標とならねばならない(足るを知る人は富む)。日本は、駄目とは程遠い先進国だ。自信を持って今までの道を進めば良い。

(雲行注記:吾唯足知・吾未不冨・可々快笑)

数日前、理工系学生の参加した日本先進技術紹介番組で、素晴らしい日本の技術紹介をした後、結論的に、「世界各国は急速に進歩し先進国化している。日本は反対に先進衰退国だ。」と恐ろしい事を言っていた。学生の夢を壊すなと言いたい。
「君たちの先輩は立派な成果を上げてきた。諸君も先輩に習って、慌てず地道に努力すれば、世界のトップ維持は間違いなし。健闘を祈る。」位の事は言ってほしかった。

(雲行注記:その番組で、日本が「先進衰退国」だと言うのであれば、番組担当者に「日本の技術が峠を越えた」とする根拠を聞きたいものだ。)

また先週、駐日ドイツ大使が2時間ぐらいのTV番組で、日本の「失われた20年」について聞かれて、「日本のTV等がそういっているのでそうなんでしょう(皮肉?)。ただ20年ぶりに日本に帰ってきた私の目には日本は確実に豊かに成っています。」と答えていた。

日本での所謂「失われた20年」を肯定的に見る人が居ることは、拙論に自信を与えてくれる。

                               以上。

2010年12月3日金曜日

解決しない普天間問題

1995年沖縄駐留米兵による少女暴行事件を契機として、大規模な普天間基地返還要求運動が巻き起こった。これに即応し、当時の橋本龍太郎首相と駐日米大使との間で下記の様な「普天間基地返還」の合意ができた。
  • 5~7 年後までの全面返還を目指す。
  • 基地移転を実現するため、十分な代替施設を準備する。

これが今日まで全く実現していないのは、日本国政府が机上の検討に終始して15年間を空費してしまった結果に他ならない。

2004年8月沖縄国際大学構内に、米軍ヘリコプターが墜落する事件が起こり、地元の「普天間基地返還」要求は更なる高まりを見た。

2009年自民党政権に終止符が打たれ、民主党鳩山由紀夫内閣が誕生した。発足当初「普天間問題」は、「目標は国外、最低でも県外」移転を高らかに謳ったが、菅直人内閣に替わる直前に、「辺野古」移転案を決めてしまった。全く開いた口が塞がらない、恐れ入った政策の180度急転回であった。鳩山内閣で副首相・経済財政担当であった菅直人氏が、鳩山内閣の後を引き継いだのであるから、「辺野古」移転案はそのまま存続し続けることになる。

鳩山内閣発足当初は、宣言を実現すべく動いたように見受けられた。平野官房長官は、米海兵隊の訓練だけを「徳之島」でと、実現の希薄な話を持掛けたりしていた。米軍は海兵隊の主力をグァム島に引き上げる計画であり、主力の国外移転は労せずして実現しそうであった。しかし最大の問題は普天間に残す800名程度の残留海兵隊である。この勢力だけは、金輪際沖縄から移転するはずがない。その論拠は「異論な話」の2010・5月「抑止力」において詳細に説明している。公約が実現不能になった結果、苦し紛れに800名の海兵隊を「抑止力」と言わざるを得なくなったのであろう。

「辺野古」への基地建設は、地元の同意なしには実現不能である。現状では、地元の同意が得られる目途は全く立たないようで、「普天間問題」は未解決のまま残される。従って、情けない話であるが日本国政府の無為無策により、米海兵隊は今後も普天間に残留し続け、心置きなく猛訓練を続ける事ができる。このため基地周辺の住民は、危険と同居し轟音に耳を塞ぐ生活を強いられ続ける事になる。

以上

2010年7月27日火曜日

底抜けの氷床

 最後の氷河期であるヴュルム氷河期には、様々な地方が氷床・氷河で覆われていた。我が国では仙丈岳大カール(南アルプス)や宝剣岳の千畳敷大カール(中央アルプス)は、ヴュルム氷河期の痕跡として有名である。ヨーロッパアルプスは大氷床に覆われ、スカンジナビア半島・デンマーク半島も大氷床の下だった。
 ところがミランコビッチの氷河期サイクル(前編参照)により、地球温暖化が始まった。当時(数万年前)の人類は極めて謙虚な生活を行っており、温暖化防止・環境保護を唱えるNGO・NPOは全く存在せず、何のキャンペーンも行はれなかった筈である。従って驚くべき速さで温暖化が進展してしまった。約2万年前に、スカンジナビア半島・デンマーク半島・ヨーロッパアルプスから氷床が消失した。一面の白銀の大自然が、草木に覆われた緑の大地と化したのである。これを「無残な自然破壊」と嘆く人々は無論皆無であったろうと推察する。ノルウェー・スウェーデン・デンマーク・フィンランド・バルト3国・等々の人達は、温暖化に足を向けて寝られない筈である。
 しかし近頃の人類ともなれば、「過れば民の嘆きなり、八大竜王 温暖化止めさせ賜え」と鶴岡八幡宮に嘆願しかねない情勢である。

 「閑話休題」。『ダンスガード・オシュガー イベント』(前編参照)は、「現在~25万年前の気温記録」であるが、「25万年以前の記録が残っていないのは何故か」が問題なのである。
 グリーンランドは、「25万年以前は氷床が無く、名前の通りグリーンランドであった。」と考えるのは、全くの早計である。



 グリーンランドの氷床は、厚さ3~4Kmである。氷の温度伝導度は金属の1桁下、大理石・花崗岩と同等である。従って氷床は分厚い布団と考えたほうが良い。表面温度は-30℃でも、底のほうは地熱で暖められて水となっている。(常温の地表を3~4Kmも掘れば、底は地熱で相当に熱く、温泉が噴出する場合もある。)


 要するに、氷床表面に雪が積もり、現在のO18/O16比のデータ記録が残されるが、その積もった分だけ氷床底部では、地熱による氷の融解で折角の古い記録が泡沫(うたかた)として消されてゆく。グリーンランドでの気温データの保管期限は25万年と決められていたのである。


 私の計算では、もしも氷床厚さが1Km以下であれば気温変動データが永久保管された筈である。しかるに誠に残念ではあるが、新しい気温データが次々に雪と共に降り積もって分厚い氷床(布団)となり、底が融け始めて、保管期限が自動的に定められるようになってしまった。



 「閑話複題」 ヴュルム氷河期の終焉に戻る。ミランコビッチ氷河期サイクルの「スカンジナビア・グリーン計画」は、太陽熱利用のトップダウン方式で強力に推進され、ほんの2万年程度の期間で実現された様である。


 地熱利用のボトムアップ方式に比べ、太陽熱利用のトップダウン方式の融解作業は2桁ほどエネルギーが大きく、厚さ数キロの氷床を2万年程度で雲消霧散させてしまった。



 右側の写真は、中央アルプス宝剣岳の千畳敷大カールである。 ヴュルム氷河期の氷河の痕跡と言われている。

2010年6月27日日曜日

地球温暖化

 地球温暖化を論ずる場合、最初に自分の立場を説明するのが良策と思う。

 現在の平均気温ベクトル(趨勢)が温暖化か寒冷化かの議論には関心が無い。また地球平均気温の「計算シミュレーション」にも、数百年未満の短期モデルにも全く興味が無い。加速度的増大を続ける人類による野放図なCO2発生は、今後抑制に向かわねばならない。エコ技術・自然エネルギー利用・原子力発電の推進等で、抑制は可能である。
 しかしながら、「大気中のCO2濃度の制御で、地球の気候を安定に固定できる」とする様な主張をされると、聴くに耐えない思いがする。自然を恐れぬ「傲慢不遜な考え方」だと思う。

 この様な立場で、地球温暖化を科学的に検討してみたい。


 世界最大の島グリーンランドは、デンマーク領である。実態は南部の沿岸を除けば、殆どは厚さ3~4千メートルの氷床に覆われている。この氷床を上から底までボーリングし、得られた氷柱を分析すれば、過去の地球の気温変動を知ることが出来る。このため、コペンハーゲン大学・日本・ヨーロッパ各国の共同で、氷床掘削プロジェクト(NGRIP)を結成し、島中央部で氷柱を採取し、詳細な分析がなされた。

ウィリー・ダンスガード博士(コペンハーゲン大学)やハンス・オシュガー博士(ベルン大学)等より「25万年前~現在の気温変動の推定」が発表され、「ダンスガード・オシュガー イベント」として有名である。





 横軸が時間。1目盛2万年、左から右に時間が経過し、右端が現在である。縦軸が気温変動。1目盛10℃、現在の気温を基準温度としている。

 これは氷中に含まれる微細気泡中の空気のO16とO18の同位体重量比の変動から導き出したものである(温度が高いほどO18が多い)。

これをみて私は驚愕した。

  1. 激烈な気温変動が極めて頻繁に起こっている。
  2. 5~8℃の気温急変は、過去に掃いて捨てる程沢山散在している。
  3. ここ1万年位は、極めて温暖で変動が少ない。過去に例がない。
  4. -1300年~ -1000年の間の気温上昇は特別激烈で、3℃/1000年 程度である。

 これらは謎であり、説明が付かない。しかし人類によるCO2発生に無関係な事だけは確かである。

 細かい変動は無視して、ゆったりした視点で眺めると、3~4万年周期(氷河期サイクル)の変動が読み取れて、若干安心した。

 地球上では氷河期と間氷期を繰り返す氷河期サイクルがある。どなたがどの様なモデルで温暖化の「計算シミュレーション」をするにせよ、過去の氷河期サイクルを計算で再現できなければ、計算モデルの正当性が疑われる。

 ここで温暖化議論の主役となるCO2の挙動を説明しておく。大気中のCO2と海水中のCO2は化学平衡関係にあり、大気中のCO2量の約2桁ほど大きい量のCO2が海水中に溶け込んでいる。海水中のCO2の1部は、海水中のCa,Mgイオンと結合し炭酸塩となって海底に沈殿除去される。Ca,Mgイオンは、岩石の風化作用により河川水に溶け込み、海水中に供給され続けている。この分だけCO2は確実に除去されているのだが、人類による大気中へのCO2放出量が多すぎて、大気中CO2濃度は漸増を続けている。産業革命以前で280ppm(容積率)程度、「石炭・石油の燃焼・森林伐採」等で20世紀末で360ppmである。80ppmの上昇である。地球の平均気温の上昇により、海水中から大気中にCO2が放出され大気中のCO2濃度が若干上昇するが、大略10ppm/℃程度の効果と見込まれる。産業革命以降平均気温が若干上昇しているとしても、80ppm増は全て人類の責任である。

 CO2は温室効果ガスである。ここで温暖化スパイラルの論理を組み立ててみる。

  1. 大気中のCO2濃度の漸増等で地球の平均気温が上昇する。
  2. 地表積雪面積(期間)が減少し、太陽輻射の吸収量が増大する。
  3. 太陽熱吸収量が増大するので、平均気温は更に上昇する。

 この様にして、温暖化シンドロームに突入する。

 寒冷化スパイラル論理は、下記である。

  1. 地球平均気温が下降し始めたとする。
  2. 地表積雪面積(期間)が拡大し、太陽輻射の吸収量が減少する。
  3. 太陽熱吸収量が減少するので、平均気温は更に下降する。

 これも簡単に、寒冷化シンドロームに突入する。

 問題は、シンドローム回避のために我々は”反転イベント”を創作する必要がある事だ。

 CO2論議だけでは問題解決の糸口は見つからない。金星の大気はCO2であるが、吾等の地球は「水の惑星」である。CO2濃度に比べ大気中の水蒸気濃度は桁違いに大きい。雲や霧が地表を覆い太陽光を反射し、熱吸収を減らすが、出現の時間・場所の変動が大きく全容把握が大変である。さらに水蒸気は、CO2以上に高性能な温室効果ガスである。従って温室効果の主役は水蒸気であり、それにCO2温室効果が若干加算されると考えるのが妥当である。

 これで主役・脇役が出揃った様である。ところがシナリオライターは、主役・脇役抜きで1920~1930年頃に”反転イベント”のシナリオを書上げていた。セルビアの地球学者ミルテン・ミランコビッチ(Milutin Milankovitch)である。地球公転軌道・自転軸傾きの振動・自転軸歳差運動 等から日照量の周期変化を求め、約2万・4万・10万年の3つの周期(ミランコビッチ・サイクル)があることを示していた。

 「ミランコビッチ」シナリオでは、主役・脇役は全く登場していない。しかし現在では脇役CO2の人気が非常に高いようである。「ミランコビッチ」シナリオに主役・脇役を登場させ、いかに上手く温室効果の役どころを演じさせるか、名演出家の出現を期待したい。

 今後の「氷河期サイクル」の科学的な公演を、寿命のある間に観てみたいと期待している。

以上