2015年7月22日水曜日

各プロジェクトの再検討

1.新国立競技場の建設

当初予算は、1,300億円程度を予定していたようである。その後 様々な
期待や思惑が強引に詰め込まれて、ゴム風船は遂に3,000億円程度にまで膨れ上がり、パンク寸前の状態である。

プロジェクトの主体を明らかにしたい。国立競技場の運営は『独立行政法人・日本スポーツ振興センター』である。博打(toto:サッカー籤)の上りを運営費の足しにしている。
国立競技場の建設費用は、我等の血税で国が負担する。建設プロジェクトの責任者は、遠藤利明・五輪担当大臣である。
有識者の非常識と各方面の思惑の詰込で膨れ上がったゴム風船に決着をつけ、合理的なプロジェクト予算で早急に再出発させねばならない。

過去の五輪の競技場建設で最高の費用を掛けたのは、ロンドン五輪で800億円である。国立競技場の当初予算 1,300億円は全く順当な予算であった。今回はロンドン五輪の倍程度 1,500億円程度は認めてもよいであろう。

思惑の詰込にかこつけて、国立競技場の命名権の発売の発想なぞ、国辱的言語道断の発想である。

新国立競技場の建設目的に「コンサート開催」をいれてはいけない。五輪の開会式は行われるが、コンサート会場としての特別な仕組みは全く不要である。
国立競技場としての必要な設備さえ有ればいい。その範囲内で「可能なコンサート」に限定して、コンサート開催を認める運用を行えばよい。

2.日本原燃の核燃料再処理工場建設

日本原燃株式会社は、核燃料サイクルの商業化を目的に設立された国策会社である。主要株主は、東電を筆頭とする各電力会社である。六ヶ所再処理工場は、青森県上北郡六ヶ所村弥栄平地区にある。
当初計画では、建設費7,600億円で2010年本格稼働を予定していた。試運転完了は、2009年2月を目指していた。しかしながらトラブルが相次ぎ、完成予定は20回以上も延期され、建設費も3倍近く 2兆円以上にも膨れ上がった。
目下試運転中で、完成目標は2016年3月を設定している。このプロジェクトは、試運転期間が余りにも長期間続き、完成予定の変更回数が極端に多い。従って『完成目標』時期の信ぴょう性は、極めて低いものと推量する。

現状打開の当面の対策は、第三者委員会による『現状把握と今後のプロジェクト運営に対する提言』を求めることである。提言は、プロジェクトの廃止まで考慮した幅広い視点からの提言を期待する。

核燃料再処理工場稼働の最大の問題点は、プルトニウムの蓄積である。日本が核燃料再処理でプルトニウムを貯め込めば、国連安保理・常任理事国を初めとし、諸外国は苦々しく思うだけである。
「高速増殖炉や軽水炉原発で燃料としてプルトニウムを消費する」と言う説明しても、日本の夢を説明しても、更にプルトニウムを貯め込むつもりだと、他国は立腹するに違いない。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の実情を考へ合はせてみると、強弩の余勢でプロジェクトは存続しているものの、再検討を行うべき時期に来ていると思う。

3.高速増殖原型炉「もんじゅ

福井県敦賀市白木二丁目1番地に建設された。プルトニウムを燃料とし、『プルトニウム増殖』を目的とする、高速増殖炉の実用化を目指した原型炉である。原子炉冷却材は、液体ナトリウムを使用している。電気出力28万kw。所有者:行政独立法人・日本原子力開発機構。

1985年10月着工・1991年5月機器類の試運転開始。1995年8月発電開始。
同年12月ナトリウム漏洩事故。2010年5月運転再開。同年8月原子炉容器内燃料中継装置落下事故。(弊著:原子力発電・参照)

2013年2~3月 原子力規制委員会の立ち入り検査。重要機器での点検漏れや虚偽報告が指摘された。
2013年5月 再発防止を目的とする安全管理体制の再構築ができるまで、「もんじゅ」の無期限の運転停止が命じられた。
ナトリウム取扱い経験の少ない規制委員会のメンバーと、「もんじゅ」の運転保安要員との対話で、聊かの話の齟齬(そご:食違い)が有ったのかもしれない。

何れにせよ「もんじゅ」の廃炉も含めて、本プロジェクトの全面的な再検討の好機であると考える。
国策として高速増殖炉開発を推し進めていた時代は、もはや去っている。今やメーカーには、液体ナトリウム取扱い経験者は殆ど居なくなっている。日本原子力研究開発機構でも、要員は減っているに違いない。

発電しながらプルトニウムを増殖してゆくという、『打出の小槌』のような夢は、泡沫(うたかた)と流れ去り、プルトニウムの保持自体が国際的には疑惑視されるのである。
今こそ『文殊の知恵』で、「もんじゅ」プロジェクトの廃止を考える時であろう。

4.発送電分離

発送電分離とは、電力会社の発電部門と送配電部門を切り離し、別会社とすることである。日本では 2017~2019年 頃を目途に実施が考えられている。自由化による競争の促進と電力料金の引き下げが狙いである。

発送電分離の成功例を韓国に見ることができる。
1961年朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が、3電力会社を合併し韓国電力株式会社を作らせた。1982年国有化され「韓国電力公社:KEPCO」となった。株式の51%を国が保有した。
2001年 電力自由化のため発送電分離を行い、送配電はKEPCOとし、発電部門は6子会社に分割した。

  • 韓国南部発電
  • 韓国中部発電
  • 韓国東西発電
  • 韓国西部発電
  • 韓国南東発電
  • 韓国水力原子力発電
日本の電力中央研究所の「電力料金の国際比較」を見ると、韓国・米国の電力料金の安さは際立っている。

       米国・韓国    日本  フランス  ドイツ
産業用     6        16     12     16
家庭用     10        24     19     38

日本で実施する場合も、韓国方式を参考にして『送配電の国有化』を前提にした発送電分離が望ましい。

5.電力料金の「総原価方式」の廃止
  
 日本の電力料金は、「総原価方式」で決定されている。発電原価に一定の利益率を乗じて電力料金を決定するため、発電原価が高いほど利益金の金額は増大する。

この様な仕組みでは、発電原価低減の意欲が出てくるはずがない。発電原価高騰の種探しに没頭することになる。
東日本大震災(2011年3月11日)以降、日本の原子力発電所は順次にすべて停止させられ、火力発電用の燃料輸入が急増した。

               2010年    2011年    2012年    2013年
貿易収支:億$      909.2    -202.8     -728.5    -1,090.2

日本の電力会社は、数年分の原子力発電所用の核燃料のストックを持ちながら、原子力安全委員会(2012年9月19日から原子力規制委員会)の下命に従順に対応し、全く痛痒を感じないのである。
発電原価の高騰は、会社の収益拡大に繋がり、むしろ大歓迎すべき事象となってしまう。
こんな仕組みは、早々に廃止すべき制度であろう。

もう一つの問題点は、各電力会社が地域独占の事業形態になっていることである。
地域独占と総原価方式は、表裏一体の関係となっている。地域独占であるために、電力料金の歯止めとして、総原価方式が採用されていると考えてよい。

送配電の国有化』とともに、発電の自由化実施し、電力会社の地域独占を廃止しなければならない。
これは長年に亘って築かれてきた各電力会社の存立基盤を揺るがす話で、実現は容易ではない。しかしこれを何としてでも実現しなくては、日本の電力体系の近代化は進まず、世界の趨勢から取り残されてしまう。

6.フランス電力会社(EDF:Electricite de France)

1946年 国有会社「フランス電力公社」を設立。2004年以降 株式を公開し民間会社となった。但し過半の株は、フランス政府が保有している。
ユーロ圏内では電力の自由化が行われているが、EDFはその中では突出したシェアーを持っている。恐らく世界最大級の電力会社である。

世界国別総発電量ランキング(2012年)

①中国        4.768317       兆kwh
②アメリカ       4.047766
③インド        1.052499
④ロシア       1.012476
⑤日本        0.966426
⑥カナダ       0.616211
⑦ドイツ        0.585224
⑧ブラジル       0.573613
⑨フランス      0.533324
⑩韓国        0.499672

EDFは、0.640兆kwh程度の総発電量であり、内0.158兆kwh 程を輸出している。
EDFは、電力自由化の進んだ他国の電力会社の株式取得に熱心であり、諸外国の電力会社を傘下に置く、多国籍企業となっている。
以上

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