被告は「大阪府選挙管理委員会」である。判決の要約は下記である。
- 原告請求の棄却。(選挙は無効とはしない。)
- ただし、選挙は違法である。
- 訴訟費用は、被告の負担とする。争点は、「一票の価値」である。議員一人当たりの有権者数の
地域格差が問題点である。高知第3区を 1 とした場合、大阪第9区は 2.063 倍、千葉第4区は 2.203 倍である。憲法では人権の平等を謳っており、「主権者たる国民全員が国政に対し、同じ影響力を持つことこそが憲法の定める国民主権の内容(判決文の引用)」である。
私は理系出身であり、法文解釈の論理説明等は全く肌に合わないと思い込んでいる。しかし今回の裁判の判決については、私は極めて奇異な感じを抱いている。
① 被告が「選挙管理委員会」である
被告は、正しく選挙を実施し大阪府第9区の当選者を決定した。選挙の実施について違法性は無い。憲法は、両議院の「選挙制度の仕組み」を国会の裁量に委ねており、被告には「選挙制度の仕組み」についての裁量権は全く存在しない。被告は「裁量権の無い被告に対する請求事案は、相当ではない」と強く主張すべきであった。
② 何故大阪府第9区だけが違憲であるのか。
この裁判は大阪府第9区に関するものである。千葉第4区も勿論違憲だろう。高知第3区も違憲ではないのか。ただし、訴えの無い所に判断なしである。
③ 2009/8/30 の小選挙区選挙全体が、違憲である。
各選挙区個々に観れば、おのおの正しい選挙がなされ正しく議員が選出された。個々の選挙区に限定すれば、違憲の判断の生じる余地は全く存在しない。違憲の判断の因って来る原因は、選挙全体を見渡した場合に限って、他との比較の上で「一票の価値」に大きな地域格差が生じているのである。したがって、「小選挙区選挙全体」とらえて違憲と言うほかないはずである。何故「大阪府選挙委員会」がこの責任を負って、原告の訴訟費用を負担しなければならないのか。
④ 違憲の当事者は誰か。
第一の当事者は、国会である。「選挙制度の仕組み」を決めるのは国会の裁量による。裁量の権利・義務は国会が負わなくてはならない。
第二の当事者は、内閣である。違憲にならない「選挙制度の仕組み」を提案しなかった。更に麻生内閣は、違憲状態のまま衆議院を解散して問題の選挙を行った。
⑤ 国会を相手に提訴できるか。
「選挙制度の仕組み」は国会の裁量権として、国会を相手に「選挙無効請求事件」の提訴が出来るか。出来るわけがない。! では如何しよう。???
これができれば、誰でも何処に住んでいても、提訴できるのですがね。
⑥ またもや、「事情判決」である。
「違憲であっても、選挙無効とはしない」との「事情判決」は、過去にも行われている。
判決文の「当裁判所の判断」は6頁~28頁に渡って詳細に記載されている。ところが「事情判決」の論拠は、最後のページに気休め程度に極めてあっさりと記載されている。「本件選挙は違法であるが、これを無効とした場合、公の利益に著しい障害が生じることは明らかであり、原告の受ける損害等を考慮してもなお、公共の福祉に適合しないと認められる」とバッサリと切り捨てているだけである。
言語道断である。裁判所判断の半分は(10頁程度か)、「事情判決」を行う論拠について詳細に説明してもらいたい。1. どの様な公の利益に、2. どの様な著しい障害が生じるか説明し、3. 「事情判決」による原告の損害(国民全員の損害)をどの様に認識しているかを、詳しく説明してほしい。
⑦ 法体系の矛盾
「事情判決」は、既成事実の遣り得を認める判決である。
ある意味では、裁判官が自ら法の尊厳を踏みにじる行為を行うことに相当する。相応の尤もらしい論拠が幾つか存在しなければ、決して行うべきでは有るまい。法の尊厳を守るためには、諸葛亮の如く、泣いて馬謖を切らなくてはなるまい。
しかし選挙の無効を宣言し、再選挙をやらせても、違法が解消されるはずが無い。これは絶対的な矛盾である。
⑧ 矛盾の解法
大阪高裁は、被告(大阪府選挙管理委員会)に対し「大阪府第9区における選挙は違法である。」といささか見当違いの判断を示した。
さすれば原告の主張「選挙無効請求」を認め、「大阪府第9区の当選」を無効とすべきであった。これで首尾は一貫する。議員が一人足りなくても、日本国に大した問題が出る訳でもあるまい。
「大阪府第9区」は議員を出さないと、一票の価値が 0 となり憲法違反になる。よって被告は再選挙を始める。再選挙を行えば又々憲法違反になるので、原告は「選挙差し止め請求」を行えばよろしい。裁判の堂々巡りになるが、訴訟費用は多分ほとんど被告負担になるであろう。
とにかく巷を大いに騒がせ、大衆の耳目を集めなくてはならない。政治問題化すれば、政治的に決着せざるを得なくなるであろう。法務大臣、見識を持って頑張って下さい。
以上
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