イランは、NPT発足当初からNPTに加盟している。従って定期的にIAEAの査察を受けながら、着実に核開発を進めてきている。
1980年頃(イラン-イラク戦争勃発)から、イランはウラン濃縮実験を開始した。
2006年4月イランの最高指導者アフマディー・ネジャード師は「核燃料サイクルに適合するウランの精製に成功した」と発表した。NPTは核技術の平和利用を禁止していないが、国連安保理は異常な過剰反応を起こし、2006年7月「イランの核開発中止を求める決議案」を採択した。勿論イランは馬耳東風で、2006年11月アフマディー・ネジャード師は「イランは完全な核燃料サイクル技術を獲得した。」と発表した。
2008年9月「遠心分離機3800基を設置し、低濃縮ウラン480Kgを製造済み。」とIAEA報告。2009年3月「核爆弾1ヶ分の製造原料となる程度の低濃縮ウラン1 ton以上を確保した。」とIAEA報告。
2009年9月イランは、新たに2ヶ所のウラン濃縮施設を建設中であるとIAEAに連絡した。これには米国オバマ大統領が鋭く反応し、「あらゆる選択肢を排除しない。」と軍事的手段の可能性を示唆する脅しを懸けてきた。
イランの馬耳東風はさらに続き、2009年11月イランは10ヶ所の濃縮設備の新設を発表した。アメリカに敢えて「NO」と言い続けるイランの面目は、躍如たるものがある。
順調に進むイランの低濃縮ウランの生産に不安を感じたIAEAは、イランで生産した低濃縮ウラン約1.2 ton をロシアで追加濃縮し、フランスで原子炉燃料に加工してイランに返還する計画を提案した。計画が実施されれば、イランの核兵器開発の懸念は当面回避することが出来る。2009/12/26の毎日新聞によれば、安保理常任理事国(米・英・仏・露・中)+独とイランの間でIAEA提案が協議されたが決裂した様である。
イランの原子力発電所は、首都 Tehran の南方 1200 Km のBushehr にある。2009/02/25 模擬燃料による試運転を開始した。
この原子炉はロシア政府の支援で、ロシア国営原子力企業ロスアトムにより建設された。ウラン燃料を装荷した本格運転は、2009年中に開始予定と報道されていたが、2010/01/20現在「本格運転開始」のニュースは未だ聞いていない。
何れにせよ、ブシェール原発用の燃料製作のため、当分の間はイラン手持ちの濃縮ウラン全てが使用されるので、ここ暫くイランの核兵器保有の懸念は無いと思う。
「産油大国イランに原子炉は不要である」と考えるのは「他国の論理」である。「電力は原子力で、石油は輸出用」と割り切るのがイランの論理である。産油国も地球温暖化防止のため原子力発電をやるべきだろう。
しかし、残念ながらイランはいずれ核兵器を持つだろうと私は予想する。勿論アメリカもそのように予想するから、オバマ大統領がイランに脅しを懸けるわけである。
イランの東隣国パキスタンはインドと共に核兵器を保有している。イランの西隣国イラクは、国連査察団の詳細な査察で「大量破壊兵器を保持していない。」確認を得て、米国は安心してイラクに侵攻した。これ以降イラクは悲惨な泥沼の戦乱に引き摺り込まれ、未だ平和は訪れていない。
このような厳然たる事実を前にして、イランが核兵器を持たないまま居続けるとは考えがたい。
イランが核武装した場合に、最も脅威を感じるのはイスラエルであると思う。イスラエルの核保有が殆ど無意味に近くなるからである。
1981/06/07イスラエルは、イラクの原子力センターを爆撃した。イラクの核兵器保有を懸念したからであろう。
イランが核武装し、スカッドミサイルに搭載してイスラエルに打ち込めば、小さなイスラエルは壊滅してしまう。逆にイスラエルが数発の原爆をイランに撃ち込んでも、大きいイランは壊滅しない。
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