2018年12月6日木曜日

第81話 苦闘を続ける英首相に世界中の声援を

第76代テリーザ・メアリー・メイ(Theresa Mary May)英国首相は、1956年10月1日生まれの62歳(2018年現在)である。
女性首相としては、鉄の女Iron Lady』として有名を轟かせた『第71代マーガレット・サッチャー英国首相』に続く 2番目の首相である。

「鉄の女」程 有名ではないが、メイ首相は「氷の女王(The Ice Queen)と呼ばれることがある。自分の意見を強く出さず、政治家同士の馴れ合いを嫌うためらしい。

オックスフォード大学で、地理学を学んでいる。
2010年、内務大臣に就任。
2016年6月23日の『EU離脱国民投票』では、メイはEU残留を表明していた。

国民投票の結果は、下記である。


  • 離脱支持 51.89%
  • 残留支持 48.11%

わずか、3.78%の僅差であった。

「離脱支持」の勝因は、『EU内における、移民に対する門戸解放』への抵抗だったと、私は推察している。
2016年の EUから英国への移民は、18万人を超える程の人数であった。

英国には、『日本国憲法』の様な 成文化された憲法は存在しない。慣習法的な「憲法らしきもの」が有るだけで在り、柔軟な対応が可能である。
日本で『国民投票』が行われるのは、『憲法改正』の時だけである。
英国での国民投票』は、下院の過半数の賛成で 何時でも実施できる。

2016年7月13日 エリザベス2世大英帝国女王陛下から首相就任の承認を受け、メイは第76代英国首相に就任した。
6月の国民投票において、4%弱の僅差ながら『EU離脱』の国民投票結果が 既に示されており、メイ首相には「大仕事」が待ち構えていた。
メイ内閣の発足にあたり、メイ首相は『EU離脱大臣』を新設した。

メイ首相は、「EU離脱」に際し強固な体制作りが必要であるとして、下院の早期解散を行い 2017年6月8日下院の総選挙を実施した。
しかしながらこの思惑に反し、選挙結果は 議席数を13減らした。
第1党の地位だけは、辛うじて保持できる有様だった。
第2次メイ内閣の発足である。

2017年8月30~9月1日メイ首相は来日し安倍首相と首脳会談を行った。
この時 皇居に参内し、今上陛下へ謁見も行っている。

EU離脱の「国民投票結果」を受け、メイ英国首相は EUに対し 2017年3月29日『EU離脱通告』を行った。
離脱交渉の進め方は、2段階のアプローチで合意された。
第1段階は、下記である。
  • EU市民・英国市民 の権利保護
  • 未払い分担金等の清算
  • 「英国の北アイルランド」と」「アイルランド共和国」の国境問題の話し合い。
第1段階については、先送りされた部分もあるが 2017年12月には「話し合いは進展した」との合意に達し、2018年には交渉は 第2段階に入った。
EU委員会の2018年の発表によれば、「EU市民・英国市民 の権利保護」は 交渉官レベルで合意済みである。
「未払い分担金の清算」は、金額は未定ながら 2020年までのEU予算分担分について合意している。

「北アイルランド国境問題」については、人の移動の自由は合意されているが、離脱後の「激変緩和策」としての「移行期間」について、2020年末までと合意された。

2018年3月のEU首脳会議では、2019年3月29日の『EU離脱日』を前提に、「北アイルランド国境管理問題」・「通商などの将来の枠組み交渉」などの対英交渉項目が山積している。

メイ英国首相は、真面目に丹念に 問題解決を進めてきているが、「いつまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ」の感はぬぐえないものと 私は推察している。
特に「北アイルランド国境管理問題」ついては、現実的に大きな課題が残っている。
約1万5千人が、「北アイルランド(英国領)―アイルランド共和国」の国境線を通過して通勤・通学を行っている。

2018年11月14日、メイ首相は臨時閣議で 『離脱協定の草案』を承認し、英国の最善の利益になるとコメントした。
しかし残念にも、翌15日4名の閣僚が辞任してしまった。
しかも4名の中の1名が、『EU離脱担当大臣』であった。

辛抱強く、粘り強い』のは、誇り高き大英帝国の伝統である。
ユニオンジャック』を「背負って立てる」英傑を見出すのに、さほどの時間は 不要であろうと期待しています。

メイ首相の粘り強い努力と今後の大活躍を、私は 強く期待し続けております。
以上

2018年11月3日土曜日

第80話 英国のEU離脱国民投票

EU欧州連合)は「マーストリヒト条約:欧州連合条約」の発効により、1993年11月1日発足した。
原加盟国は、ベルギー・独(当時西ドイツ)・仏・伊・ルクセンブルグ・オランダの 6 ヶ国であった。
第6次拡大(2013年)まで拡大を続け、現在は下記の 28 ヶ 国約5億人)となっている。

加盟国

ベルギー・ブルガリア・チェコ・デンマーク・独・エストニア・アイルランド・ギリシャ・スペイン・仏・クロアチア・伊・キプロス・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルグ・ハンガリー・マルタ・オランダ・オーストリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロベニア・スロバキア・フィンランド・スウェーデン・英 である。

非加盟国

スイス(永世中立)・ノールウェー・アイスランド・トルコ(地域的立場が微妙)・ウクライナ・ジョージア・ボスニア ヘルチェゴビナ・コソボ・セルビア・アルバニア・マケドニア・他6国(小国)

1957年に、EEC(欧州経済共同体)が結成された。
加盟国は、ベルギー・仏・独・伊・ルクセンブルグ・オランダ である。
1960年 頃、 EEC に対抗し、英国が主体となってEFTA(欧州自由貿易連合)を結成した。
しかしながら 英国は、「エドワード・ヒース」政権下で、1973年 EEC に加盟した。
1975年英国は、EEC加盟の是非について 国民投票を実施している。
結果は、「加盟を続ける」であった。投票率 64.5%。
賛成  17,378,581 票 67.2%
反対    8.470,037 票 32.8%

1990年 マーガレット・サッチャー(鉄の女)政権下でERM(欧州為替相場メカニズム)に加入した。
1992年 ERM 離脱、結果的に EU共通通貨 ユーロ を拒否した。

英国第75代 デーヴィッド・キャメロン 首相は、2012年 世論で騒然としていた『EU離脱問題』を無視したが、将来の国民投票の可能性は示唆していた。
キャメロンは、2015年の総選挙でも勝利した。
彼自身は EU残留 を支持していたが、与党議員や閣僚は各自の選択に任せると宣言した。更に彼らが公然と、「EU離脱」運動を行っても支障ないとした。

英国の EU離脱 の国民投票は、2016年6月23日に実施された。
有権者総数   46,501,241
投票総数    33,578,016  投票率 72.2 %
離脱      17,410,742  51.89
残留      16,141,241  41.11 %
有効票     33,551,983  99.92 %

この結果に基づき、第76代 テリーザ・メアリー・メイ首相(女性)は EU と離脱交渉を行うこととなった。
2017年3月29日、英国はEUに対し『EU離脱』交渉を開始した。
英国は、EU加盟のアイルランドと「英領北アイルランドとの間に 国境問題を抱えており、交渉難航も予想される。

2017年6月8日の英国の総選挙で、与党の単独過半数とはならなかったが、第2次メイ内閣が発足した。

第1回『離脱交渉』は、EU バルニエ主席交渉官   vs  英国 デービス「EU離脱担当大臣」との間で、6月19日 ブリュッセル で行われた。
①離脱交渉は2段階に分けて行う。
②第1段階は、10月の「EU首脳会議」までに完了させる。
  • EU市民権の保全
  • 離脱清算金の処理
  • 北アイルランド国境問題
を優先して協議する。

6月29日、EUが方針説明書を公開。
7月13日、英国が「EU離脱法案」を議会に提出。
12月8日、英国メイ首相と EUユンケル委員長が会談し 第1段階は合意に達したと共同文書を発表。

2018年3月19日、英国とEUは 環境の激変を避けるため 「移行期間」を設けることに合意した。
移行期間は、2020年末までの1年9ヶ月である。

従って2020年末までは、英国の北アイルランドとアイルランドは 実際上ボーダーレス(無国境)である。
しかし英国が EU から完全に離脱する2021年からは、明確な国境線が引かれることとなる。
「移行期間」での上手い運用の智恵で、国境線は「ハードな国境線」とはならないのではないかと、私は希望的な観測をしている。

以上








   

2018年9月29日土曜日

異論な話 第79話 広島高裁 伊方3号機判決

広島市の住民が提訴した、「四国電力・伊方3号機 原子力発電所の運転停止仮処分」は、2017年12月13日 即日抗告審で、広島高裁は『2018年9月30日まで運転停止の仮処分』を行った。裁判長は、定年間際の野々上友之裁判長であった。

予想通りに、四国電力から異議申し立てがあり、『仮処分』に対す「異議審」で 広島高裁(三木昌之裁判長)は 2018年9月25日『仮処分』の取り消しを行った。

この勝訴により四国電力は、伊方原子力発電所3号機(電気出力:89万kw)を 本年10月末頃に稼働させる模様である。


この一連の裁判で問題となっていたのは、驚く事に『阿蘇山の噴火のリスクなのである。
阿蘇山(熊本県) ⇒ 伊方原子力発電所 は、130km 程度である。
確かに阿蘇山は、9万年ほど前に『破局的大噴火』を行っている。噴出した火砕流は、九州中央部を覆い尽したと想定されている。

しかしこの「9万年前の話」は、現状では全くナンセンスな話だと思われます。阿蘇山の『破局的大噴火』に対して、日本政府も熊本県も何の対策も考えていません
近々に起こる確率は、殆どゼロに近い事柄ですから無理もありません。
それなのに何故、一連の裁判だけでは『破局的大噴火』で大騒ぎしなければならないのか、私にとっては 全くもって不可解な話です。

我々日本国民は、発生確率が殆ど ゼロに近い 極めて僅少なリスクに対しては、いちいち気にしては暮らしていません。
この一連の裁判は、何だか「話のすり替え」が行われたような、気がしてなりません。

本来住民が『伊方3号機の運転停止』を裁判で争うのであるならば,伊方3号機原発の「ハード・ソフトの問題点」・「管理体制や運用機構の問題点」などで争うのが本筋であると思われます。
しかし本筋で争うためには、提訴者の知識・技量が生半可では 四国電力に到底太刀打ちできる筈がありません。

提訴した広島市の住人の中には、かなりの智恵者がいた と考えるのが、順当であると思えます。
殆どゼロに近い阿蘇山の噴火のリスク』だけで、これだけの裁判を持ちこたえることが出来たのですから 凄いものです。

広島市の住人が、最高裁に提訴しなかったのは、『極めて賢明な選択』でした。
『最終決着させなかった』事に、大きな意義があると思います。
以上


2018年9月22日土曜日

第78話 中華人民共和国の政治機構

左図は、中国の白地図である。中国の首都は、北京である。

日本の沖縄の先にある『台湾は、現在『中華民国』が統治している。
現在の台湾の『総統』は、第14代 蔡英文総統(女性)である。

白地図の最南端の島・海南島を含めて、『中華人民共和国』の領土である。
領土面積は、ロシア・カナダ に次いで 世界第3位である。
人口は、13.8億人(2016年) で世界第1位である。

尖閣諸島は、日本国領土 (沖縄県石垣市)であり、日本政府が統治する無人島である。
1969・1970年の国連の海洋調査で、東シナ海に大量の石油資源の埋蔵が推定された。
すると全く突然に、「中華人民共和国」と「台湾当局」が 『尖閣諸島の領有を強引に主張し始めた。
『尖閣諸島』魚釣島から、中国大陸330km。『尖閣諸島』魚釣島から、台湾170km。
『尖閣諸島』魚釣島から、石垣島170km。

中国共産党による『中華人民共和国』の建国は、1949年10月1日とされている。
中国共産党員は、8,800万人程度おり 党員は政府を支配し続けている。

『中華人民共和国』の政治は、1院制である。議員数 2,980人。
最高議決機関は、『全国人民代表大会』略称:『全人代』である。
議員は、省・自治区・直轄市・特別行政区や 軍 から選出された代表で構成され、一般国民は 選挙には拘れない。
議員任期は、5年である。『全人代』は、毎年1回3月頃に行われる。

香港・マカオ については、1国2制度とし 自治権を認めている。
香港は1997年、英国から中国に返還されている。
マカオは1999年、ポルトガルから返還された。

中国国民には、結党の自由はない。
また日本の様な、三権分立も存在しない。
立法機関は『全人代』である。
行政機関は「国務院」があり、司法機関として「最高人民法院」と「最高人民検察院」がある。

実際に国の政治を動かすのは、中国共産党であり 『中央政治局常務委員会』が権力を掌握している。
中国共産党の最高指導者は、『中国共産党中央委員会総書記』である。
『政治局常務委員』の中から選出される。

第19期『政治局常務委員
 習近平:共産党総書記・軍事委員会主席
 李克強:国務院総理
 栗戦書(りつせんしょ):第10代『全人代』常務委員長
 汪洋:前国務院副総理
 王滬寧(おうこねい):復旦大学教授
 韓正(かんせい):国務院常務副総理

2018年3月11日『全人代』は、『中華人民共和国憲法』を 賛成2958票・反対2票で改正し、国家主席と国家副主席の「任期制限」を撤廃した。
従来の任期は、「2期10年」であった。

2018年3月17日、習近平は国家主席に 王岐山は副主席に選任された。
このため、習近平は事実上の『中国皇帝』に成り上がった。
中国皇帝』の任期に制限はない。
習近平中国皇帝』は、今後心おきなく『一帯一路』の経済圏構想なんぞに 精力を注ぎ込み、血道を上げることが出来る事となっている。

以上