2012年4月23日月曜日

北朝鮮の人工衛星打ち上げ失敗

2012/4//13、7時40分頃、北朝鮮は人工衛星『光明星(クァンミョンソン)3号』の打ち上げを行った。
同国北西部・東倉里(トンチャンリ)の西海(ソヘ)衛星発射場から、『銀河(ウーハ)3号』ロケットに搭載した人工衛星の打ち上げである。
ロケットは略真南に発射され、1~2分後高度120km程度まで上昇して爆発し、破片は韓国西方の「黄海」に落下した。北朝鮮には甚だ申し訳ない気がするが、私は失敗で良かったと安堵の胸を撫で下ろしている。

①ミサイル問答
日本の報道では、『人工衛星の打ち上げと呼称する・事実上のミサイル発射』と極めて回りくどい呼び方を繰り返していた。NHKでも似たような耳障りな説明を繰り返し、日本国民に『ミサイル』の印象付けを執拗に試みていた。
日本国民の貴重な歴史的遺産であり、世界に冠たる道徳規範でもある『武士道精神(Sence of Social Justice)』に基づき、今後日本国においては、独立行政法人『宇宙航空研究開発機構』JAXSAが、種子島からH2ロケットで人工衛星を打ち上げる際には、必ず『事実上のミサイル発射』という耳障りな語句を付け加える必要があるものと、私は確信した。

日本のH2ロケットのメインエンジンの燃料は、液体水素・液体酸素であり、燃料装荷に大変な手間暇が掛かる。兵器としての弾道ミサイルにはなり難い。
これに反し、北朝鮮の銀河3号ロケットは、ノドンミサイルがベースとなっているようであり、弾道ミサイルによる衛星打ち上げである。燃料は『ジメチール・ヒドラジン』と推察され、常温で液体であるから、燃料注入にさしたる手間は掛からない。

基本的に、国連が北朝鮮の人工衛星を禁止する権限は持たない。北朝鮮は人工衛星の打ち上げを予め宣言しており、手間暇かけて公開していたのである。何も毎度の報道に、耳障りな語句を恣意的に繰り返す必要はなかったと思う。今回の一連の騒動は、北朝鮮が人工衛星の打ち上げに失敗したのだと、素直に認めてやればいい。

②北朝鮮の気配り
今回の北朝鮮の人工衛星の打ち上げ方法には、きめ細かい配慮がうかがえる。本来なら地球の自転を利用して、東向きに打ち上げるのが定法である。ところが今回は、南向きに打ち上げた。とにかく、海上経由で打ち上げたかった意図がくみ取れる。

前回は、2009/2/5 11:30 「光明星2号」搭載の「銀河2号」ロケットが東向きに発射され、日本の東北地方の上空高度数100km(大気圏外)を通過して太平洋に落下した。前回も人工衛星打ち上げは失敗している。但し北朝鮮は『「光明星2号」の打ち上げに成功した』と、頑強に放送し続けていた様である。
日本の人工衛星打ち上げも、種子島から東に向かって打ち上げ、H2ロケットは洋上を飛翔し太平洋に落下する。

③PAC-3 配備
航空自衛隊は、PAC-3の沖縄への配備に大わらわであった。MIM-104 Patriot が正式名称である。迎撃ミサイルであり、パトリオットの呼称が一般的であるが、自衛隊等の公式名称では『ペトリオット』である。PACは、Patriot Advanced Capability の略称である。

「銀河3号」ロケットが落下してきても、照準操作の訓練だけにして『ミサイル発射』はしないで欲しいと、私は願っていた。
迎撃ミサイルを発射しても、落下物が増えるだけで、かえって危険が増すだけである。かてて加えてもしも命中しなければ、世間の物笑いの種になり、防衛大臣の「参議院の問責決議」だけでは事が収まらなくなってしまう。

④安堵感
とにかく、今回の事の顛末には、ほっとした安堵感が有る。
大騒ぎした割には、大した事はなかった。田中防衛大臣が参議院で問責決議を食らった程度である。北朝鮮も前回の失敗とは大いに異なり、素直に失敗を認めている。かなり普通の国に近づいてきたように見受けられる。

日本国も、なるべく早く北朝鮮に対する経済制裁を止め、万景峰号(マンギョンボンゴウ)の往来を認め、交易再開に努力した方が良い。
北朝鮮は、核兵器とノドンミサイルを持っているが、何時までも敵対視するのは止めたほうが良い。我々は、米・中・露・印等核兵器保有国と普通に付き合いをしているではないか。お互いの経済関係が密接になれば、相互に大切な国同士になるはずである。
以上


2012年4月5日木曜日

世界の燃料消費

米国のオバマ大統領は、イランの核開発に大きな不安を抱いており、イランに対し金融制裁を課している。確かに、イランの核開発は目覚ましく進展している。複数箇所にウラン濃縮工場を建設し、現に濃縮ウランの製造を行っている。当面はイラン南部のBushehrにある原子力発電所用の燃料製造に使用する目的である。

イランは核拡散防止条約(NPT)に加盟しており、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れている。1993年NPTを脱退しIAEAを国外に叩き出した北朝鮮とは大違いである。
(右図はIAEAの旗である。)

イランは、NPTの条約に基づきIAEAの監査を受けながら核開発を行っている。米国から非難される理由がない。
米国オバマ大統領のイランに対する金融制裁の仕打ちは、国際的正義にもとる。米国の「対中東政策」は、イスラム~イスラエルの対立の図式を前提に行われている。イランの核開発は、当然ながらイスラエルにとって我慢のならない大きな脅威なのである。イスラエルは、核兵器保有について『一切のコメントを拒否』している。しかし一般的には「核兵器保有国」と看做されている。もちろんNPTには、最初から加盟していない。

ところが、将来イランが核兵器保有国となった場合、イスラエルの核兵器保有はほとんど無意味になってしまうのである。万一イランから核ミサイルを撃ち込まれると、小さい国土のイスラエルは、核ミサイル1発で壊滅してしまう。一方、広大な国土のイランは、イスラエルから数発の核ミサイルを撃ち込まれても、国が壊滅する事態にまでは至らない。

建国以来、イスラエルは、近隣諸国の核開発に極めて過激に反応していた。1981年サウジアラビヤ経由の飛行ルートで、イラク中部のOsirakにあるイラクの原子炉を爆撃し全壊させている。
しかしながら、イスラエルとイランは1000km以上も離れており、イスラエルが歯ぎしりして悔しがっても、イラク上空での空中給油なしに、イランのウラン濃縮工場を爆撃する事は不可能である。1000km以上の距離は、もはやミサイル攻撃の範囲である。北朝鮮はノドン・ミサイルを中東に輸出しており、射程は1000~1300kmである。イラン東部から発射すれば、イスラエルはノドンの射程内である。

米国にとって、イランの核開発は極めて気懸りであり、強引な金融制裁でイラン締め付けに躍起になっている。日本とドイツは、米国から有難いお目こぼしを頂戴したようである。イランからの石油輸入を減らしているのを評価し『今後もイランから石油を買っていい』との米国のご託宣を得たのである。
私は、「今頃何を言っているのか」といささか驚いた。日本は最近特別に石油輸入を減らしたわけではない。長期間にわたり減らし続けたのだ。過去10年間で日本は30%石油消費を減らしており、ドイツは12%低減させている。

前置きが大変長くなった。本論に戻る。
あらためて、世界の燃料消費について調べてみた。BP社の「Statistical Review of Energy 2010」を眺めていると、様々な事情が見えてきます。以下の議論は、同社のデータを利用した。

①石油消費

世界の5大消費国は、米・中・日・印・露で、トップ5で全世界の石油消費の44~45%を占めている。米国だけで22~24%、中国10%、日本5~6%である。ドイツ7位、イタリア13位、イギリス14位・・・と続くが、フランスはランキングに出てこない。原子力発電が多いためと推測する。
2000~2009の10年間で、米国(25→22%)・日本(7→5%)は漸減、中国(6→10)は急増している。
世界の石油消費は、3600→3900(百万トン)に増加しているので、日本の石油消費の落ち込み(255.5→197.6:百万トン)はかなり大きい

②天然ガス消費

世界の5大消費国は、米・露・イラン・カナダ・中である。トップ5で全世界の45%を占め、米国は22%である。日本6位(3%)、イギリス・ドイツ・サウジアラビア・イタリアと続くが、フランスはやはりランキングに出てこない。これも原子力発電によると考える。
消費の急増は、イラン(2倍/10年)・中国(3.6倍/10年)である。それ以外は「%表示では」略安定している。
日本は3%で安定しているようであるが、世界の消費量が2400→2900億立方メートルに増大しているので、日本の消費も相応(723→874億立方メートル)に増大している。
日本は、石油から天然ガスに少しづつ切り替わっているようである。

③石炭消費

世界の5大消費国は、中・米・印・日・南アフリカである。石炭消費は、燃料用だけでなく、製鉄用にも使われるので、注意が必要である。
中国は10年間で29→47%に消費量を増大させており、目覚ましい経済発展を遂げた。米国は24→15%に減少した。インド(6~7%)・日本(3~4%)は安定している。世界の消費量が2246.7→3408.6(百万トン)と1.4倍に増大しているが、日本は98.9→108.8(百万トン)と微増である。

③ウラン生産量

ウランの消費量は、殆ど統計がない。やむを得ず生産量を調べたが、BP社の「Statistical Review of Energy 2010」には記載なし。
フランスのAREVA社(世界最大の原子力産業複合企業)が国際原子力機関(IAEA)の会議で報告している資料を見つけたので、これを利用した。「2002~2008年の7年間の年別ウラン生産量」である。
総生産量は35→45ktonに漸増している。カナダ10kton・オーストラリア7~8kton程度で安定している。カザフスタン(3→10kton)の伸びが大きい。ニジェール等アフリカ諸国の産出量も10kton程度で、漸増である。「other CIS」は8kton程度で安定している。『other CIS』とは、カザフスタン以外の『独立国家共同体』の意味である。『独立国家共同体』とは、ロシア・カザフスタン・タジキスタン・ウズベキスタン・キルギス・ベラルーシ・アルメニア・アゼルバイジャンの8カ国である。大部分が中央アジアの国である。

カナダ・オーストラリア・カザフスタンの3大生産国で、ウランの世界生産の略60%を占めている。
以上