2018年2月3日土曜日

第76話 原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟

小泉純一郎元首相や細川護熙元首相が顧問を務める、頭記の団体がある。
この団体の主張を、要約すれば下記となる。

①原発の即時停止
②核燃料サイクル事業からの撤退
③原発輸出停止
④自然エネルギー電力比率を、2030年までに50%以上

政治家は細かい議論に拘泥せず、極めて端的な表現で話したがるものである。
ひと先ずは、①~④までについて 私なりの順当な吟味を行ってみる事にした。

1.原発の即時停止(私は反対

現在運用中の原子力発電所は、40基(約4千万kw)である。
沸騰水型が22基、加圧水型が18基である。

この中で、2018年2月現在で 稼働中の原子力発電所は、下記である。
何れも、『加圧水型原子力発電所:PWR』である。

(1)川内1・2号基(加圧水型:PWR)九州電力 各89万kw
(2)伊方3号基(加圧水型:PWR)四国電力89万kw
(3)高浜3・4号基(加圧水型:PWR)関西電力各87万kw

但し、伊方3号基については、住民らの「運転差止」仮処分申し立てについて松山地裁は、2017年7月21日却下した。
しかし「広島高裁」は、12月13日『運転差止』を決定した。差し止め期限は、2018年9月末である。

「運転差止」の根拠は、『過去最大の、阿蘇山噴火の火砕流が、伊方原発に到達する可能性が十分小さいとは評価できない。』とのことである。
過去最大の噴火とは、約9万年前の噴火である。阿蘇山~伊方原発は、約130km程度。
9万年前の噴火』は、過去最大級の噴火で ウルトラプルーニー式噴火(破局噴火)であったと言われている。『火砕流は九州中央部を覆い尽し』て、一部は山口県秋吉台に達したと予想されている。
勿論それ以前の噴火も沢山ある。26.6万年前・14.1万年前・13万年前。
これらの噴火による火砕流の噴出量は、9万年前の噴火による噴出量に比べて桁違いに小さい。

『9万年前の噴火』が、再度起こる可能性の有無は 現在の技術ではよくわからない。
万一起こった場合を想定すると、暗澹たる惨状を想定する事態となる。
火砕流は九州中央部を覆い尽し、被害は山口県にも及ぶ。
「伊方原発運転差止」の議論など とは 「およそ桁違いのレベル」の、巨大な問題提起である。
広島高裁の伊方原発運転差止理由として挙げられた、『9万年前の阿蘇山噴火と同程度の火砕流』を想定すると、現状では『九州中央部が火砕流で壊滅し、1千万人程度の人口喪失が行われる』事の想定となる。

広島高裁の伊方原発運転差止の根拠は、『9万年前の阿蘇山の噴火と同程度の火砕流が、伊方原発に到達する可能性が十分小さいとは評価できないと言うことである。

「火砕流の到達の可能性が十分小さいこと」は、今後四国電力(株)が説明することになると思うが、その想定する火砕流は伊方原発到達前に「九州中央部を覆い尽し、被害は山口県にも及ぶ。」のである。
広島高裁の判決は、『九州中央部が火砕流に飲み込まれて壊滅し、1千万人程度の人口喪失が起こる』事を想定せよと言う、べらぼうな話なのである。
起るかどうかは判らないけれど、殆どナンセンスに近い想定問答の議論である。

広島高裁の伊方原発運転差止理由は、全く現状にそぐわない無茶苦茶な想定を強要するものとなっている。
火砕流が伊方原発に到達する以前に、九州中央部を壊滅させてしまうのである。
ナンセンスな想定を強要する裁判が、正当な裁判として受け入れられる筈がない。

原発運転の効用は、『国家リスクの低減』に大きな貢献が見込めることである
原発が一度運転を開始すると、1年以上燃料供給なしに運転可能である。
しかし火力発電は、常に燃料供給が必要である。

慎重に様々な「国家リスク」を考えてみると、当然ながら火力発電では『少なくとも各発電所の半年分程度の、燃料備蓄を考慮すべきであろう。』とおもわれる。
原発の場合には、1基の原発が稼働すると その原発はそのままで、1年以上燃料供給なしで運転可能である。1年分以上の燃料が、既にその原発に装荷されているのである。

以上により原発の即時停止には「国家リスク」対応の観点から、「全く賛成できない」のである。

2.核燃料サイクル事業からの撤退(私は大賛成)

核燃料サイクル事業は、日本原燃(株)(JNFL)が実施している事業である。
日本原燃は、国策会社で 本社所在地は 青森県上北郡六ヶ所村である。
事業内容は、「ウラン濃縮」・「使用済み核燃料再処理」・「核廃棄物管理」などである。
主要株主は、9電力会社と日本原子力発電(株)である。

青森県上北郡六ヶ所村に、『核燃料再処理工場』の建設を始めたのが1993年である。
フランス『Areva NP』の技術を導入した。
当初の完成予定は、2009年2月であった。
以降完成予定の変更を23回も繰り返し、現在の目標『2018年度上期』の予定も覚束ない模様である。
当初の建設予算は8千億円程度であったが、2017年で既に3兆円程度に膨れ上がっている。
日本原燃の費用は、我々が電力会社に支払っている『高額の電力料金』の一部として賄われている。
現在においては、核燃料再処理は全く無意味な行為となっている。諸外国から『核兵器製造』の疑惑を持たれるだけなのである。
原子力発電所用核燃料の低濃縮ウランは、高性能遠心分離機で十分安価に簡単に製造できる。

上記により、「核燃料サイクル事業からの撤退」に『私は大賛成』である。

3.原発輸出停止(どうでもいい話)

沸騰水型(BWR)は、福福島第一原発の炉心溶融事故で、イメージが悪すぎる。
加圧水型(PWR)は、輸出を考えることもできるが、今のところ日本の原発輸出の実績はない。

韓国の原発は、全て加圧水型で稼働率が極めてよい。
韓国が開発した「標準型APR-1400(140万kw電気出力)の輸出を、今まで韓国政府は計画中であった。
しかし文在寅(ムン)・ジェイン)・大統領(2017/05/10 ―)となって、政府の方針を 脱原発に大きく舵を切ったようである。

4.自然エネルギー電力比率を、2030年までに50%以上(技術的に問題が多い)

現在2018年であるから、「今年を含めて後14年間」である。
自然エネルギー電力とは、下記があげられる。

①水力発電
②太陽光発電
③風力発電
④海流・潮流発電

「水力発電」を除いて、何れも「小規模分散型の発電設備」である。
「小規模分散型の発電設備」」は、そのままでは使用できず 別途巨大な集送電設備が必要で、このために『巨額の資本投下』がなされることが前提条件となる。
しかも「太陽光発電」・「風力発電」・「海流・潮流発電」は『脈動的・間欠的』発電である。
電力系統全体の『安定性・信頼性』 を保持するためには、『脈動的・間欠的』発電を主要電源とすることは  全く不可能である。また蓄電池による大電力の蓄電は、現在の技術の延長線では全く経済性がなく 成立し得ない

従って別途安定な「巨大な発電設備」が存在し、この主電源の出力調整により『脈動的・間欠的』発電の変動分を吸収させる以外に 方法がない。
私は、『自然エネルギー電力比率を、50%以上』と言う『目標自体が、技術的には相当以上に無茶苦茶な主張であると 思えるのである。
以上