1.コールダーホール型原子力発電所
フランスの原子力発電所は、コールダーホール型原子力発電所の建設から始まった。天然ウランを燃料とし、中性子減速材には黒鉛を使用する。原子炉冷却材には炭酸ガスを使用した。
ChinonA1~A3・Bugey 1・G1~G3(マルクール原子力地区)・Saint-Laurent A1~A2の合計9基である。最初の原子力発電所ChinonA1の着工が1957年である。
この当時のフランスにはウラン濃縮技術がなく、天然ウランからプルトニウムを生産し、長崎型のプルトニウム核爆弾を作る目的であった。
ChinonA1の営業運転期間は1963~1973年である。コールダーホール型原子力発電所は逐次営業運転を開始していったが、長くても20年程度で営業運転を終了している。Saint-Laurent A2の1992年の営業運転終了で、フランスのすべてのコールダーホール型原子力発電所の営業運転は終了した。
この型の原子炉は、イギリスで開発されたものである。天然ウランで発電できるのが特徴であり、施設は大規模であるが電気出力は非常に小さい。建設の主目的は「原子爆弾製造原料のプルトニウムの生産用」であった。
日本の最初の原子力発電所は東海第一原子力発電所で、コールダーホール型原子力発電所であった。イギリスからの輸入であり1960年1月着工、営業運転開始は1966年7月である。生産されたプルトニウムはイギリスが引き取る事になっていた。電気出力16万kwであった。
1998年3月末営業運転を終了し廃炉になっている。現在廃炉作業が進められている。
2.CANDU型原子力発電所
カナダで開発された、原子力発電所である。重水減速・重水冷却で、天然ウラン燃料の原子炉である。カナダはCANDU一本槍であり、国情に合致した一貫した政策は立派である。他の形式の原子力発電所は、カナダでは建設されていない。
フランスでは電気出力7万kwの1基だけ輸入した。稼働期間は1967~1985年である。
原子力開発を目指した国は、ほぼ間違いなくCANDU炉を輸入しているが、日本だけは輸入していない。
その代わりに、日本は独自に設計した新型転換炉(ふげん)を建設した。重水減速・軽水冷却・圧力管型原子炉である。着工1970年12月、運転開始1978年3月、運転終了2003年3月。現在廃炉作業中である。もはや新型転換炉の開発は行われる可能性は全くなく、このプロジェクトは失敗であった。
3.高速増殖炉
Phenix(23.3万kw)とSuperphenix(120万kw)を建設し運転していた。前者の運転期間は1973~2010年、後者は1985~1997年である。
プルトニウムを燃料とする原子炉で、原子炉の冷却材は液体金属ナトリウムである。高速中性子による核分裂を利用するので、中性子減速材は不要である。
高速増殖炉の最大の特徴は、原子炉炉心内の「ブランケット」の天然ウランからプルトニウムが生産されることである。さらに驚くことに、燃料として消費するプルトニウムよりもブランケット内で生産されるプルトニウムの方が多いのである。全く「打出の小槌」のような発電炉なのである。この型の発電所を使い続ければ、すべての天然ウランがプルトニウムに転換されて、さらに電力に転換されてゆくことになる。発電用エネルギー源としては、笑いの止まらないような話であるが、全く正しい科学的事実である。
日本で建設された「常陽」・「もんじゅ」はこの型の原子炉である。
「常陽」は実験炉で発電設備はない。某ユーザーの運転不手際で、炉心上部の機構を損傷し、現在運転休止中である。
「もんじゅ」は原型炉で2010年5月運転を開始したが、炉内中継装置の落下事故でうんてん停止中となっている。
4.加圧水型軽水炉
現在フランスで稼働中の原子力発電所は、全て加圧水型軽水炉(PWR)で、59基である。ベルギー国境近くのChooz(ショー)AもPWRであるが、何故だか稼働期間1967~1991年で稼働を終えている。ChoozB1~B2は現在も稼働している。
5.フランス電力会社EDF(Electricite de France)
フランスの国策会社で、株式の85%を政府が保有している。フランスの電力市場は完全に解放されており、必ずしもEDFの独占ではないが、EDFは世界最大の電力会社であると思われる。
欧州連合(EU)をはじめ、電力自由化の進む国々の電力会社株式を積極的に買収し、世界各国の電力会社を傘下に集める多国籍電力会社である。
6.フランスの電源構成
フランスと日本の電源構成を下記に示す。2011年のデータである。
フランス 日本
石油 0.6 14.7
石炭 3.1 27.0
天然ガス 4.8 35.9
原子力 79.4 9.8
水力 8.1 8.0
その他 4.0 4.6
フランスは余剰電力を近隣諸国に輸出している。
7.電力料金比較
OECD/IEAからの孫引きで、グラフからの読取値であるから最後の桁は不確かである。
読取数値は、2012年の家庭用電力料金の値である。
韓国 95 $/Mwh 34%
アメリカ 120 47
フランス 175 63
イギリス 217 78
日本 278 100
イタリア 288 104
ドイツ 342 123
%表示は、日本を基準にした場合の料金比較で、韓国は日本の1/3程度、ドイツは23%高い。
8.フランスの国土
フランスと日本の国土事情を以下に示す。
フランス 日本
人口 0.6234(2009年) 1.276(2012年) 億人
面積 63.3 37.8 万平方キロメートル
人口密度 98.5 338 人/平方キロメートル
GDP 2.58 5.96 兆ドル(国内総生産:2012年)
GDP/人 4.14 4.67 万ドル/人
フランスは、日本国土の倍くらいの広い国土で、日本人の半分くらいの人口で暮らしている。一人当たりのGDP(国内総生産)は、日本とフランスは大差ない。
9.原子力発電所の位置