2013年11月24日日曜日

国家リスク

日本は、平和国家である。治安が良く、内乱・騒乱などはまず起こらないと考えて暮らせる、大変有難い国である。
国家破綻確率の低い国ランキングでは、日本は常時10位ぐらいのところにいる。ちなみに最近(2012年)のトップ10を以下に示す。

①ノルウェー
②米国
③スイス
④スウェーデン
⑤英国
⑥オーストラリア
⑦香港
⑧フィンランド
⑨日本
⑩ニュージーランド

日本の内閣には「内閣危機管理監」と呼称する役人のポストがある。このポストは、警察ばたのトップである「警視総監」からの天下り先の一つになっている。この人たちの経験と努力により、常時世界のトップ10入りを果たし、日本国内では枕を高くして就寝することができるのである。
従って、「我々日本人は彼ら警察官僚に対して大いに感謝すべきであろう」と、私は考えている。
ただし温和な日本人の一人として、欲張った話をさせてもらうと、将来的にはランキング⑤⑥位には食い込めるはずだと信じたい。

ただし日本国の危機管理は、もちろんこれだけの話では終わらない。この他にも日本国政府が、どの様なリスク管理をどの程度行い、今日の「平和国家日本」を維持できているのか、あらためて再吟味してみたい。

「国家リスク」管理の最重要項目として下記の5項目を挙げる事ができる。

国際平和の維持
防衛力の維持強化
国内農業の保護育成
資源の備蓄
補給路の確保

国際紛争の回避については、最大限の努力を払うべきである。
独立行政法人・国際協力機構(JICA)が行っている政府開発援助(ODA)は、大変金は掛かるが、発展途上国を日本の味方にできる大切な仕事の1つであると考えられる。

防衛力の維持強化も、最重要項目の1つである。自衛隊は、核兵器は持たないが、世界でも屈指の軍事力を持つところまで強化されてきた。「日米安保条約」とも相まって、日本と本気で戦争をしようと考える国は、まず無い筈である。
日米安保条約」は、日・米いずれかへの攻撃に対し、「各自国の憲法上の規定に従って対処する」事になっている。
戦争を放棄している日本国憲法においては、万一の『有事』の際は、下記のように対処するであろう。

①自衛隊は、日本国民・日本国土の安全のために対処する。
②米軍は、米国民・米軍基地の安全のために対処する。

食料の自給体制は、国家リスク上の最重要項目の一つである。食料自給率には2種類の統計手法がある。

①生産額ベース    69%(2010年)
②カロリーベース    36%(2010年)

私は貿易立国日本が、「生産額ベース」で自給率70%近くとなり、りっぱなものだと思います。農水省は「カロリーベース」で、自給率40%足らずで問題だと考えているようです。
都市近郊で「生鮮野菜」を生産している農家は、「カロリーベース」ではほとんど貢献していませんが、「生産額ベース」では正当に評価されます。

日本は鉱物資源には恵まれていませんが、森林資源に恵まれ、水も豊富です。本気になれば食料自給も可能です。日本の人口は漸減を続け今世紀末には5千万人程度になります。
農水省の基本方針は、「現状維持」のように見受けられます。日本の将来を見据えて、この際農水省は本気になって、農業政策の大転換を検討して戴きたい。

①補助金の出し方
  減反奨励金のような、農産物を作らないことへの税金投入をやめる。
  休耕田・荒地・ゴルフ場の耕地化に補助金を出す。
  大規模農業・機械化奨励金をだす。
  裏作奨励金(農地の有効利用)

 
 
②既得権益の再吟味
  全ての農業規制を廃止し、農業の自由化を進める。農業会社の自由化。
  農業委員会・農協の必要性と役割を再吟味する。

日本は鉱物資源が乏しく、資源の備蓄と補給路の確保はそれぞれ「国家リスク」対応の最重要項目の1つとなっている。
備蓄は、下記に大別できる。

①燃料備蓄
②金属資源備蓄

燃料備蓄は、天然ガス・石油・石炭が大切である。
天然ガスは超低温で液化してLNG輸送船で輸入し、国内のLNG(液化天然ガス)貯蔵基地で貯蔵されている。2~3週間分の貯蔵量である。万一補給路の確保ができなければ、最新鋭の「天然ガス火力発電所」は2~3週間で停止せざるを得なくなる。
石油備蓄は国策として重点的に管理されており、約半年分の備蓄がある。
石炭は、世界各国に幅広く産地が分布しており、「どこからでも簡単に安く輸入できる」として、意図的な備蓄は行っていない。

金属資源備蓄は、独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」で行っている。

対象鉱種

①ニッケル
②クロム
③タングステン
④コバルト
⑤モリブデン
⑥マンガン
⑦バナジウム

半年分の備蓄を目標にしているようである。マンガン・バナジウムは達成率100%であるが、その他は54~78%で目標に達していない。

補給路の確保は、米国第7艦隊に負うところ大であり、我々は第7艦隊に大いに感謝しなければならない。第7艦隊は、横須賀を母港とする揚陸指揮艦「ブルーリッジ」を旗艦とする、世界最強の艦隊である。主力艦は原子力空母「ジョージ・ワシントン」である。
東経160度以西を担当海域としている。具体的にはハワイ諸島の西端から始まる西太平洋とインド洋である。

天然ガスの主要輸入先は下記である。

①ペルシャ湾岸諸国他  41.7%
②オーストラリア      18.2%
③マレーシア        16.8%
④ロシア            9.5%
⑤インドネシア         7.1%
⑥ブルネイ            6.7%

約半分を極東とオーストラリアから輸入し、残り半分をペルシャ湾岸諸国に依存していると考えてよい。いずれの補給路についても第7艦隊の存在を前提にした「シーレーン」の維持が大切である。

石油の輸入先は、サウジアラビアを含むペルシャ湾岸諸国からの輸入が82%程度で、その他は18%程度しかない。
石油の場合は、天然ガス以上にペルシャ湾から日本に至る「シーレーン」の維持が極めて重要である。
これこそが、日本の命綱である。

以上