鳩山内閣の来期予算の事業仕分が公開で行われ、拍手喝采を送りたい。枝野衆議院議員・蓮舫参議院議員の取り纏めも快刀乱麻で、適役だった。但し仕分けられたのは一般会計約90兆円の内の極々一部でしかないのは残念であった。約200兆円規模と予想される特別会計は未だ殆ど手付かずのままである。
野党自民党は事業仕分について、「こんな短期間に決めてしまうのは如何なものか」と言っている。もっともな御意見と承って、なるべく早い機会に大規模・継続的な事業仕分機構を創設し、一般会計・特別会計の事業仕分を国民に公開するのが望ましい。今回初めての事業仕分を、ガス抜き程度の話に終わらせず、継続的に実施する機構を作ってこそ、政権交代の真骨頂が発揮された事になる。
科学技術関係ではスーパーコンピュータ開発予算7千億円余りが業務仕分で「要検討」となった。後でマスコミを通じて、ノーベル賞受賞者野依先生がその必要性を主張された。これは役人の常套手段に乗せられた全く奇妙な構図であり、野依先生には甚だ気の毒な事情と相成ってしまった。
当然の事ながら、予算の申請を行い、予算の配分・実施権限を持つ当事者は担当の役人である。従って配分・実施権限を持つ担当役人が、職を賭して予算の必要性を説明すべきである。ところが担当役人は業務放棄・戦線離脱し、その代役として著名人が修羅場に放り出されるのである。今回は野依先生が修羅場に立たされる構図になってしまった。
野依先生は、「科学技術向上の為の先行投資は、日本国の存亡に係る不可欠のもの。」との趣旨の説明をされた。これに異を唱える人は誰一人いないと思う。但し残念なことながら、仕分作業は一般論を対象にはしていない。科学技術向上の先行投資項目は掃いて捨てるほど沢山ある。これを掃き捨てるものと残すものに仕分けるのが事業仕分である。従って、どうゆう手法・基準で仕分けてゆくかが議論の対象なのである。
仕分担当者や我等国民が、修羅場に立たされた野依先生に大いに期待するものは、先生が選択された(優秀でノーベル賞受賞にまで至った高効率の先行投資)と(いつまでも成果の出ない非効率の先行投資)を見分ける上手い方法があればご教授願いたいと云うことである。別の言い方をすれば、先行投資の優劣を見分ける機構をどのように作ればよいかである。勿論この機構を役人の天下り先にしてはいけない。
スポーツ関連予算については、業務放棄の担当役人の代役としてフェンシングや洋弓のメダリストが修羅場に立たされていた。担当役人は予算申請当事者の代役をJOCに振向け、JOCは当然ながら著名人としてメダリストを選んだ。2004年アテネ大会の洋弓銀メダリスト山本博氏と2008年北京大会のフェンシング・フルーレ銀メダリスト太田雄貴氏である。両氏はマスコミを通じ、スポーツ界の野依先生を演じ、JOCへの国庫補助の必要性を説明していた。
スポーツ関連の補助金は、独立行政法人日本スポーツ振興協会を通じてばら撒かれる。この協会には政府が2千億円余り出資しており、中央省庁からの天下り先になっている。公営賭博totoはこの協会が運営しており、賭博のかすりで資金は潤沢である。
税収不足で過去最高の国債発行も予想される不景気の最中である。来年度デフレスパイラルを脱せられるかどうかの瀬戸際である。スポーツ界も無駄を排し経費節減に努力してほしいと、事業仕分が行われた訳である。
2010年バンクーバー冬季五輪や2012年ロンドン夏季五輪で、たとえ獲得メダル数が若干少なくなったとしても、現在の経済事情からすれば、これは止むを得ない仕儀ではないかと思う。オリンピックは参加することに意義があると言うではないか。但し、この際は無意味に多数の役員や選手を派遣するのもご勘弁願いたい。